【徹底解説】遺言と家族信託 強いのはどっち!?

2021年03月16日

 

家族信託には遺言的な機能もありますが、家族信託と相反する内容の遺言が作成された場合には、財産の帰属はどうなってしまうのでしょうか?

この問題に迫っていきたいと思います。

 

家族信託は遺言の機能も持ち合わせている

皆様ご存知のとおり、家族信託では、父の財産を子に信託することによって、子がその財産を管理することができるようになるため、父の認知症対策として有効です。

家族信託をした場合、父が亡くなった後の具体的な財産の承継方法は、家族信託の契約書の中で定めておくことができます。

つまり、家族信託は認知症対策だけでなく、遺言の機能も持ち合わせているのです。

遺言機能を持たせた信託を「遺言代用型信託」と呼びます。

 

家族信託と遺言、優先されるのはどっち?

それでは、遺言と家族信託の両方を作成していた場合、果たしてどちらが強いのでしょうか?

どちらが先に作成されたか?を場合分けして、具体例でご説明します。

 

A

BCD

 

1)遺言家族信託

まず、父Aは「すべての財産を子Cに相続させる」という内容の遺言を作成しました。

その後、父Aが子Bとの間で信託契約を締結し、その契約の中で「父Aが死亡して信託が終了した後、財産は子Bに承継させる」と定めました。

 

この場合、家族信託が勝ちます。

なぜなら、遺言は作成後も撤回・書き換えが可能だからです。

遺言作成後に家族信託がされた場合は、財産の譲渡に当たるため、民法上の法定撤回をしたものと解釈されます。

 

2)家族信託遺言

まず、父Aと子Bが、父Aが死亡して信託が終了した際には、子Bが信託財産をすべて承継するという内容の信託契約を締結しました。

その後、父Aは「すべての財産を子Dに相続させる」という内容の遺言を作成しました。

 

この場合も家族信託が勝ちます。

なぜなら、父Aが子Bに対して信託をすると、財産は子Bに譲渡されたことになり、父の固有財産ではなくなるからです。

Aが信託された財産について遺言を書いたとしても、その財産は自分のものではないため遺言は無効になります。

 

いずれの場合も、家族信託の方が優先される

以上のように、どちらの順番でも家族信託が勝つのですが、皆様に押さえていただきたいポイントがさらに2つあります。

「相続性のある受益権」は遺言の対象になる

まず1つめは、(2)の場合において、「相続性のある受益権」は遺言の対象になるという点です。

信託をすると、受益者である父Aには受益権が発生します。

この受益権を対象として遺言を作成することは可能です。

なお、受益権には「相続性のある受益権」と「相続性のない受益権」がありますが(詳細については、またどこかの機会でお話しできればと思います)、遺言の対象とできるのは、あくまで「相続性のある受益権」のみです。

(ちなみに、具体例(2)で掲げている信託の受益権は、相続性のない受益権です。)

家族信託を撤回することで遺言を有効にすることができる

2つめに、(2)の場合、家族信託を撤回することによって、遺言を有効にすることができるという点です。

信託法では、原則として委託者兼受益者によって信託契約を一方的に解除できるようになっています。

しかし、受託者である子Bとしては、せっかく覚悟を持って行った信託契約を一方的に解除されたらたまらないですよね。

そういった事態を避けるため、【撤回不能型信託】を作ることができます。

 

「一方的に契約解除できない」

「受託者を解任できない」

「信託契約の内容を変更できない」

 

こういった内容を信託契約に緻密に盛り込んでいくことによって、結果的に撤回不能な信託ができあがります。

この方法によって、信託契約で定めた財産の承継内容を確実に実現できるようになります。

(遺言には撤回を防ぐ方法はありません。)

それぞれの特徴及び、信託ではできて遺言ではできない部分(撤回の可否の選択)などは相続のサポートをするうえで重要な知識となるので、ぜひ押さえておいてください。

まとめ

家族信託には遺言的な機能もありますが、家族信託と相反する内容の遺言が作成された場合には、家族信託のほうが勝ちます。

その際、「相続性のある受益権」は遺言の対象になること、家族信託を撤回することで遺言を有効にすることができるという2つのポイントを、ぜひ押さえておいてください。