家族信託をしたら贈与税がかかる?不動産の名義変更と贈与税の関係を徹底解説

2021年03月23日

「家族信託をすると贈与税はかからない」と聞いたことがある方もいるかもしれません。

これは正しい場合もありますが、正しくない場合もあります。

特に家族信託においては不動産を信託するケースは多いですが、その場合に贈与税はどうなるのでしょうか?

今回は不動産を信託した場合に贈与税は払わないといけないのか?というテーマを中心に不動産名義の変更と贈与税について解説していきます。

 

贈与税とは?

贈与とは自分の財産を他人に無償で譲り渡すことをいいます。

そして贈与税とは、「個人からの贈与によって財産を無償で取得した場合に、その取得した人に課税される税金」です。

贈与税の納税義務者は、財産を贈与した人(贈与者)ではなく、財産を貰った人(受贈者)ですので、混乱しないように注意しましょう。

 

ちょこっと補足解説

贈与税は、あげた人にかかるのか?もらった人にかかるのか?改めて質問されると、意外と答えに詰まってしまいませんか?税金は、財産を持っている人(担税力がある人)にかけられる、という原則を押さえておけば、もらった人にかけられる、ということがおのずと見えてきます。また、実際の贈与の場面では、受贈者にかけられる贈与税まで計算して、受贈者の手元に残したい金額よりも多く贈与する、といったことがなされることもあります。

 

 

家族信託における不動産の名義変更の場合

それでは、不動産を信託した場合に贈与税は払わないといけないのか?を具体的に検討していきます。

例として、お父さん(=委託者)が息子(=受託者)に自宅を信託し、自宅の管理・処分を任せたい場合で考えてみます。

 

受益者課税の原則

不動産を信託すると、不動産の名義はお父さんから息子に変更され、法律上も息子が所有者になりますが、所有者となった息子はお父さんに対して不動産取得の対価を払っていません。

そうすると、「財産を無償で取得した場合」に該当するため贈与税がかかってしまうのではないか?という話になりますが、贈与税が課税されるかどうかは、信託の内容によって異なります。具体的には、信託の受益権が誰にあるかです。

税法では、信託財産から収益が生じた場合、実際に収益を受け取る受益者に対して課税することとされており、これを「受益者課税の原則」といいます。

 

自益信託の場合

信託の当事者には委託者、受託者、受益者の3者がおりますが、通常の家族信託をする場合は、委託者が受益者を兼ねることが多いです。委託者が受益者を兼ねる信託のことを「自益信託」と言います。

先程の例で言えば、お父さんが委託者兼受益者になります。この場合の受益権は居住する権利であったり、自宅を売却した際の売買代金を受け取る権利などになりますが、これらの権利は信託後もお父さんが持ち続けます。

また、受託者である息子は、信託によって法律上の所有者にはなりましたが、信託不動産の利益を享受するわけではありません。

それらを前提に、受益者課税の原則(実際に収益を受け取る受益者に対して課税すること)を当てはめてみると、実際に収益を受け取る受益者はお父さんですが、信託の前後でこの収益を受け取る権利はお父さんから変わっていません。(=無償の譲渡行為がない)

したがって、自益信託の場合には贈与税はかかりません。

 

司法書士からのワンポイント!

実は、自益信託でも「受託者」に贈与税の課税がなされる場合があります。「特定委託者課税」というのですが、この点は複雑なお話になりますので、また別の記事で触れていければと思います。自益信託なら贈与税のリスクが全くない!というわけではないので、その点だけは心に留めておいてください。

 

他益信託の場合

一方で、例えばお母さんを受益者として信託をする場合で考えてみます。

この場合はお父さんが委託者、お母さんが受益者、息子が受託者となります。このように委託者と受益者が別々の人物になる信託のことを「他益信託」と言います。

先程と同じく、受益者課税の原則(実際に収益を受け取る受益者に対して課税すること)をこの場合に当て嵌めてみると、実際に収益を受け取る受益者はお母さんです。

信託の前は収益を受け取る権利は(所有者として)お父さんでしたが、信託の後はお母さんに変わっているため、税務上は信託によりお父さんからお母さんに財産権が移転したと考えます。(=無償の譲渡行為があった)

したがって、他益信託の場合には贈与税が課税されます。

 

まとめ

以上のとおり、不動産を信託する場合は、法律上の所有者は受託者に変更され、その登記も必要となりますが、税法上の贈与税課税対象者は受託者ではなく受益者です。

そして、不動産を信託した場合、その信託の内容によって、贈与税の課税・非課税の結論が異なり、「自益信託」の場合には贈与税はかからず、「他益信託」の場合には贈与税がかかることになります。

そのため、家族信託をする場合は、特段の事情がない限りは委託者と受益者を同一人物として設定する「自益信託」で組むのが安心です。

 

この記事の監修者

司法書士 梶原隆央(かじわらたかひさ)
神奈川県出身
平成21年司法書士資格取得
トリニティグループの信託部門にて、 実家信託から信託財産数億円に及ぶ信託、 自社株式の信託等、幅広く信託案件に対応。