【家族信託のリスク!?】 特定委託者課税のリスクと対策を解説します!

2021年03月24日

 

家族信託の大きなポイントの一つとして、自益信託であれば贈与税等がかからないということは皆さまもご存じかと思います。

事業承継のシーンで、すぐに株式買取りのキャッシュを用意できない場合でも、家族信託を使えばキャッシュ不要で議決権の移転ができるところは、信託活用の大きなメリットの一つです。

ですが、自益信託であっても、贈与税等がかかってしまうケースがあります。

それが特定委託者課税です。

今回は、その特定委託者課税のリスクと対策について解説していきます。

自益信託で課税されてしまう例外がある

家族信託の事例として最も多いのは、父親が、自分が認知症になる前に財産を子供に託して、父親が委託者兼受益者、子供が受託者になる、いわゆる自益信託です。

この自益信託の形で不動産を信託財産とする信託契約時においては、贈与税、譲渡所得税、不動産取得税等の税金は原則かかりません。

課税されるとしても登録免許税の0.3%0.4%程度とわずかなものです。

ただし例外があり、それが本日ご紹介をする特定委託者です。

 

税務署・国税庁は、相続税法上の規定により課税対象者を受益者としています。

つまり先ほどのケースで申し上げると父親が課税対象者だということになります。

受益権はその信託財産から経済的価値を受け取る権利であり、それを持っている人が担税力があるとされ、名義が受託者に変わったとしても結局経済的な価値を受け取る人に動きが無ければ、そこに課税はできません。

なので自益信託のことを「受益者等課税信託」とも呼びます。ここで着目すべきが、「等」の部分です。

この受益者「等」課税信託の「等」の中に特定委託者の立場が含まれているのです。

 

特定委託者とは?

特定委託者とは、下記①②の『両方』に該当する者のことです。(相続税法第9条の2

 

  • 信託の変更する権限を現に有している
  • 信託財産の最終的に給付を受ける権利を持っている

 

これには誰が当たるのかと言うと、冒頭に上げた事例の場合、子供である受託者です。

信託法上、信託契約は委託者・受益者・受託者の合意によって変更できるとされています。

一方、特定委託者該当の要件①について、相続税法施行令は、「この変更権限とは他の者との合意によってする権限を含む」としています。

したがって受託者は、法律上当然に①の要件を満たしているということになります。

続いて②の要件を見てみましょう。

父親が亡くなった後にその財産を相続により取得するのは、多くのケースでは子供になります。

子供は財産の帰属権利者という立場であるため、②の要件を満たすことになります。

すなわち、一般的に行われる家族信託においては、受託者は①②のいずれにも該当することになります。

つまり契約時において贈与税課税される信託になってしまっているのです。

 

課税されないための回避策は?

では、どうやってこの問題を解決するか。

特定委託者について定めた相続税法第9条の25項(要件②)において、カッコ書きで

「軽微な変更をする権限として政令で定めるものを除く。」

と書かれています。

これは、受託者は信託の変更権限を有するが、その変更権限が軽微な変更権限だけであれば、この権限にはなりません、ということです。

つまり、受託者が持つ変更権限を「軽微な変更」に変更(権限の縮小)すれば良いのです。

受託者の変更権限を変更する

具体的には、信託契約上において、受託者の変更権限を変更します。

まず、「軽微な変更権限」とは具体的にはどのような権限なのかというと、政令の規定で、

「信託の目的に反しないことが明らかである場合の権限」

と規定されています。(相続税法施行令第1条の7

そこで、受託者である長男の信託の変更権限を、信託契約書中の条項において、「委託者、受益者及び受託者は、本信託を、信託の目的に反しないことが明らかである場合に限り、変更することができる」と規定しておきます。

そうすれば受託者の持つ変更権限が「軽微な変更権限」に縮小され、「特定委託者」に該当しなくなるのです。

 

まとめ

今回は自益信託であっても贈与税等がかかってしまうケースがあること、その対策として「受託者の変更権限」を変更することで回避できることを解説しました。

ちなみに、当社において組成する信託はこれまでもすべて特定委託者課税のリスクに配慮した上で、契約書の作成をしてきました。

皆様も本日ご紹介した点にご留意いただき、クライアントへのサポートで安心をお届けしてください。