「遺言書作っていれば、認知症になっても大丈夫。」は本当か?

2021年03月26日

「争」続がメディアで取り上げられることも多い昨今。

万が一のために遺言書やエンディングノートを残しておくことを考えている方も多くいらっしゃると思います。

よく、認知症になってしまうと遺言やエンディングノートを遺せないので、早めに準備しておきましょう!と言われていますね。

では、遺言書があれば認知症になってしまっても、財産管理の備えは十分でしょうか?

実際の手続きと合わせてお話していきます。

 

遺言書≠認知症対策

遺言書を書くことが「認知症対策」になるかと問われると、答えはノーです。

認知症になった方が、実際亡くなられるまでの平均余命は7~10年と言われています。

遺言書はあくまでも遺言者が亡くなったときから効力を発生します。

よって、認知症発症~お亡くなりまでの10年前後、本人の意思能力がないと判断されれば、

預貯金の引出や不動産の管理が凍結あるいは停滞してしまう可能性が高くなります。

遺言を遺すことで自分が亡くなったあと揉め事が起こらないよう財産の行き場をクリアにしておくことは、本人にとってもご家族にとっても安心ですよね。

ただ遺言書があることが認知症対策になるかというと、対策にはならないのが実際のところです。

 

認知症になると預金の引き出しはどうなる?

認知症になってしまうと本人の財産が動かせなくなる可能性があります。

例えば預貯金。

金融機関としては口座名義人の財産を守らなければなりませんから、本人以外のご家族がある程度まとまった資金を動かそうとする場合には、通常以上に本人確認等が厳しくなります。

具体的に何を確認されるかというと、

 

・お金を動かすことへの本人の意思の確認

・本人の身分証の提示

・来店した本人の家族の身分証明書の提示

・場合によっては名義人と来店者の関係性の分かるもの

 

などが必要となります。

認知症で意思確認が難しく引出がどうしても必要な場合、資金の移動記録が残る振込に切り替えることを勧められたり、

介護施設や病院からの請求書の提示も必要になってきます。

認知症の程度にもよりますが、電話または面談による意思確認が難しい場合は資金を動かすことは難しくなるでしょう。

 

「任意後見制度」と「家族信託」

認知症により金融機関での引出しが難しい場合、どうしたらよいか。

一部の金融機関では、独自の認知症対策制度の取扱いも始まっていますが、大体の金融機関は「後見人」を付けることを推奨しています。

しかし、うかつに後見人をつけてしまうと、本人の財産をすべて後見人に渡さなければならなくなったり、後見人に報酬を支払わなければならなくなったりするので、要注意です。

ご自身が認知症になってしまうことをご不安に感じられているのであれば、上記のような状況に陥る前に、あらかじめ任意後見制度を利用することをお勧めします。

任意後見制度では、ご自身の判断能力が確かなうちに、自分の判断能力が低下したときには信頼できる方へ財産の管理などを任せておくことができます。

(依頼する方は誰か、誰に後見を依頼するか、どういったことを依頼するかを決めて公正証書にしておくことが必須です。)

また後見制度以外に、認知症発症~遺言効力発生までの間の対策として「家族信託」の利用も効果的です。

家族信託も任意後見制度と同様に、判断能力があるうちに自分の信頼できるご家族や親族へ財産の管理を依頼し「信託」という形で契約をします。

何を信託するかは、信託をしたい方、する方(委託者)と信託を受ける方(受託者)、ご家族皆様で決めることができます。

二つの制度の違いについては、また別の機会にまとめていければと思います。

 

まとめ

今回の記事のポイントをまとめると以下の通りです。

 

①遺言書があっても認知症対策としては不十分     

②認知症になると資産が動かせなくなる可能性が高い

③認知症対策として、事前に備えるのなら「任意後見制度」「家族信託」が有効!

 

80歳を超えると今や5人に1人が認知症になっている超高齢化社会の日本。

認知症対策が取れるうちに何か一つ一考し、人生100年を謳歌出来るよう人生設計を立てみるのはいかがでしょうか。

 

 

この記事の監修者

司法書士 梶原隆央(かじわらたかひさ)
神奈川県出身
平成21年司法書士資格取得
トリニティグループの信託部門にて、 実家信託から信託財産数億円に及ぶ信託、 自社株式の信託等、幅広く信託案件に対応。