家族信託の話をすると、機嫌が悪くなる親。説得に成功した事例を紹介

2021年03月30日

「親が財産の内容を教えてくれない。」

「将来の話をすると、怒ってしまう。」

「親が頑固で、家族信託をやろうとしない。」

家族信託のご相談の中で、よくいただくご相談に、親が家族信託に乗り気でない。という話があります。

そのような場合に、我々がどのようにご両親を説得するのか、成功事例を通してお伝えします。

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頑固なお父様の説得方法。「自分は、認知症にはならない!」

家族信託は、「認知症対策」としてよく利用されますが、認知症対策の話をされるといやな気持になるご高齢の方も多くいらっしゃいます。

私がご相談いただいた男性のお客様を例にとってお伝えしていきます。

事前に娘さんから、「もしも、お父さんが認知症になったら、銀行の預金もおろせなくなるんだよ。」と説明をしたところ、「自分は認知症にならない!」の一点張りで、話を聞いてくれませんでした。

事前にその情報を教えていただいていたので、私がこの男性とお話をさせていただく機会を頂いた際にまず気を付けたのは、「認知症の話をしないこと」でした。

 

困っていることに耳を傾ける。

認知症の話をせずに、まずは、男性の生活状況のお話を聞いてみることにしました。

男性の自宅は、住宅街の高台にあり、銀行などがある駅前からもかなり離れていたため、買い物や預金の管理も大変だということでした。

また、自宅の前にある長い階段をいちいち、上がったり下りたりするのが億劫で、ここ何年かは、出かけること自体が少なくなってしまったというお話もきけました。

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リアルな悩みは、財産管理ではなく、「介護問題」

男性の話をしっかり聞いたあと、私は、すこし踏み込んで、「今後、介護が必要になったときのことは考えていますか?」と尋ねてみました。

すると、男性は引き出しから、近くの介護施設の情報が書かれたチラシを何枚も出してきて見せてくれました。

新聞折込や、ポスティングで介護施設の情報があれば、ためておくようにしていたそうで、そんなことは、同席していた娘さんも全く知らず、非常に驚いていらっしゃいました。

男性は、自分が自宅で生活していくことに限界を感じ始めていて、そろそろ、そういった施設に入居しなければいけないかもしれない。。。と考え始めていたところでした。

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家族信託には、認知症対策以外の意味もある。

私は、男性が介護施設に入った場合、どのような費用がかかるのかというお話をしました。

男性の家の近くの施設は、入居金が最低でも900万円程度かかる施設しかなかったため、急に介護が必要になったとしたら、その預金を娘さんでは準備することができないことも、合わせて説明をしました。

男性は、「なるべく娘に迷惑をかけたくない。」「それでも、面倒を見てもらうことになるだろうから、ある程度の財産を娘に遺したいと思っている。」というご自身の秘めた気持ちも、教えていただくことができました。

 

第三者の専門家が入ることで、話が進むことがある。

男性の話を伺って、家族信託には、認知症対策以外の使い方もあるということを説明しました。

男性のための家族信託で、重要なことは、

 

①認知症を発症していなくとも、家族信託を利用していれば、急な介護費用の出費にも、娘さんが預かっているお金から出すことができる。

②万が一、介護費用が足りない場合に、自宅を売却して資金をねん出する手続きを、娘さんに依頼できる。

③自分が亡くなったあとに、娘さんに財産を受け取ってもらうことができ、遺言の代わりにもなる。

 

という3つのことでした。

丁寧に、このメリットを説明し、第三者の専門家である私からお話をさせていただいたことで、感情的にならずに家族信託について前向きに考えていただくことができ、実際に家族信託のご依頼をいただくこととなりました。

どうしても、すぐに家族信託はしたくない場合は、「条件付き信託契約」を利用する方法も

この男性は、お話をしっかりすることにより、家族信託を利用する気になっていただきましたが、すべての方がそううまくいくとは限りません。

どうしても、すぐに家族信託はしたくない場合は、「条件付き信託契約」を利用する方法もあります。

つまり、「いまは契約だけ締結しておいて、認知症になった時点で、家族信託を開始する」という契約です。

この契約は、「まだまだ自分は元気だ」と思われている方でも、10年後、20年後に備えて今から契約を締結しておきましょうという提案をすることができるため、非常に喜ばれる仕組みです。

実際に、利用される際には、契約書の内容に、いつから家族信託を開始するのか?や、家族信託を開始するときの手続きは誰がするのか?等を明確に決めておく必要があります。

契約書の作成は、複雑になるため、家族信託の専門家に任せるのがよいでしょう。

 

まとめ

家族信託をご高齢の方に無理に進めることは、その方の気持ちを傷つけてしまうこともあり、うまく行かないことが多いです。

今の生活の状況から、将来本当に起こりうる困りごとを想像していただき、家族信託が必要なのかどうかを、ご本人に寄り添って考えていくことが必要だと思います。

どうしても、すぐに家族信託はしたくない場合は、「条件付き信託契約」を利用する方法もありますので、ぜひとも、専門家に相談してみてください。

 

この記事の監修者

司法書士 梶原隆央(かじわらたかひさ)
神奈川県出身
平成21年司法書士資格取得
トリニティグループの信託部門にて、 実家信託から信託財産数億円に及ぶ信託、 自社株式の信託等、幅広く信託案件に対応。

 

 

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