年金は家族信託できるのか?家族信託できない財産とは?

2021年06月01日

自分の財産の一部を頼れる家族に託して管理してもらう家族信託ですが、中には家族信託ができない財産も存在します。

では、老後の生活において重要な収入源となる年金はどうでしょうか?

この記事では、年金は信託できるのか?

その他、家族信託ができない財産にはどのようなものがあるのか?

について解説をさせていただきます。

親が持つ「年金受給権」を、子に信託することは出来るのか?

結論から申しますと、年金は家族信託が「出来ない」財産です。という回答になります。

何故ならば、年金は本人しか受け取ることが出来ない権利であると法律が定めているからです。

ご参考までに根拠となる法律を以下に記載します。

 

厚生年金保険法

(受給権の保護及び公課の禁止)

第四十一条 保険給付を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押えることができない。ただし、年金たる保険給付を受ける権利を別に法律で定めるところにより担保に供する場合及び老齢厚生年金を受ける権利を国税滞納処分(その例による処分を含む。)により差し押える場合は、この限りでない。

 

国民年金法

(受給権の保護)

第二十四条 給付を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押えることができない。ただし、年金給付を受ける権利を別に法律で定めるところにより担保に供する場合及び老齢基礎年金又は付加年金を受ける権利を国税滞納処分(その例による処分を含む。)により差し押える場合は、この限りでない。

 

一身専属権とは?

先にお伝えした「年金受給権」の権利関係を「一身専属権」といいます。

「一身専属権」とは、権利を持つ本人のみに帰属する権利のことを言い、

個人の人格や才能、あるいは個人としての法的地位などとの間に密接不可分の関係にあるために、

他人による権利行使を認めることが  不適切な権利義務です。

一身専属権は年金受給権以外にも、生活保護受給権や、使用借主権などがあります。

認知症発症後どのように給付された年金を有効活用するのか?

財産の凍結を防ぐための家族信託ですが、貯蓄があまりなく、年金が唯一の生活の糧となっている方の場合には、活用の道はないのでしょうか。

必ずしも、全く活用ができないとは言えません。

家族信託の対象にできないのはあくまでも「年金受給権」であって、支給された年金そのものは、純粋な金銭として家族信託の対象とすることが可能です。

したがって、委託者が元気なうちは、年金の受給を受けるたびにそれを信託財産としていくことで、将来の凍結リスクを回避することが可能となります。

ただし、最も重要となる、本人が認知症によって意思の雨量を喪失した後については、もはや新たな信託契約が不可能となるため、受給した年金を信託することができません。

そこで、実務上行う対処法としては、本人の生活に係る水道光熱費や税金などの固定費の引き落とし口座を年金が入ってくる口座としておき、年金が自動的に本人の生活費の一部として活用されていく形を作っておきます。

こうすることで、事実上の資産の完全な凍結は回避することができます。

その他の方法としては、年金の受給先口座から自動送金で一定額を決まった日に、開設した信託口口座へ送金するように、銀行の自動送金サービスを利用するといったことも可能です。

ただし、この自動送金サービスは、利用する金融機関により異なりますが、月額数百円~数千円の手数料が発生します。

また、金融機関によっては、自動送金サービス申し込みから最長5年等の期間を設けており、こちらも注意が必要です。

自動送金されてくる金銭も追加で信託財産となるように信託契約書に明記しておく必要があります。

事実上、家族信託が難しい財産

年金受給権のように、法律上家族信託ができない財産のほかに、法的には問題ないが、事実上家族信託の対象とできない財産もあります。

その代表例が、有価証券その他の金融商品です。

これらは、必ずしも家族信託ができないというわけではありませんが、信託するためには、その金融商品を保有している口座のある証券会社が受託者名義の口座開設に対応している必要があります。

しかし現在、受託差名義の証券口座を開設できる証券会社は限られています。

したがって、受託者名義の口座が作れる証券会社で金融商品を保有している場合でなければ、事実上、その金融商品を家族信託の対象とできないという結論となってしまいます。

なお、上場株式や国債など一定の有価証券は他の証券会社に移管をすることができますので、受託者名義の口座が開設できる証券会社に移管することによって、信託を可能とすることもできます。

なお、現在証券口座の開設が可能な証券会社の代表例としては、野村證券、大和証券、楽天証券などがあります。

まとめ

年金受給権等、家族信託ができない財産について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか?

実務上も、信託できない財産の対応については毎回慎重な検討を余儀なくされる部分です。

シンプルに考えるのであれば、家族信託ができない財産はひとまず放置して、それ以外の財産で将来に備える、という見方もひとつでしょう。

しかし、それではうまくいかない場合もあります。

そのような場合には、経験豊富な専門家に相談してみるのが良いでしょう。

 

この記事の監修者

司法書士 梶原隆央(かじわらたかひさ)
神奈川県出身
平成21年司法書士資格取得
トリニティグループの信託部門にて、 実家信託から信託財産数億円に及ぶ信託、 自社株式の信託等、幅広く信託案件に対応。