費用で見る、遺産相続対策3選

2021年06月01日

「財産を希望する家族に、きちんと遺したい。」

「遺された家族がもめることだけは避けたい。」

「遺産は、自分が思うような使い方をしてほしい。」

「なるべくお金をかけずに対策したい!」

遺産相続についての思いは、十人十色。

その人にあった遺産相続の方法を選ぶお手伝いをするのが、相続の専門家の務めです。

この記事では、遺産相続の方法を、その手続きにかかる費用という観点で、比較していきたいと思います。

最も費用がかからない「自筆証書遺言(じひつしょうしょゆいごん)」

最も費用が掛からない方法は、自筆証書遺言を作成するという方法です。

自筆証書遺言とは、紙とペンがあれば、誰でも自由に書くことができます。

遺言の内容を記載し、日付と名前を書き、自分の印鑑を押すことで有効な遺言書が出来上がります。

原則は、遺言をする人本人が、全文を手書きで書く必要がありますが、財産目録の部分については、印字したものでもよいという特例があります。

費用はかからないが、実際には使えない遺言になることも。

自筆証書遺言は、費用が掛からないという点ですが、専門家に相談せずに作ってしまうと、使えない遺言書となってしまうことがあります。

例えば、「自分の自宅は、長男に相続させる。」と書いた遺言書があったとします。

この遺言書があったとして、相続の時に長男は、個の遺言書を使って自宅の名義を自分に変更するができるでしょうか?

実は、この内容の遺言書は、実際の自宅の名義変更の手続きには、使用できない可能性があります。

なぜなら、「自宅」と表現している不動産が、どの不動産のことなのか、客観的に明らかでない可能性があるためです。

このように、専門家のサポートなく作った遺言書は、実際には使えないということが、よく見受けられます。

専門家によって異なりますが、おおよそ2万円~5万円程度で遺言書の内容をチェックしてくれる場合もあります。

自筆証書遺言を作成する場合には、専門家のチェックを受けるようにしましょう。

自筆証書遺言は、紛失の恐れがある

自筆証書遺言は、基本的には自宅で保管することになります。

銀行の貸金庫で保管する方がいらっしゃいますが、実は、これはお勧めできません。

銀行の貸金庫は、ご本人が亡くなったあと、相続人の方が開けることになりますが、貸金庫を開けるためには、戸籍を集めたりする時間がかかるため、遺言書が発見されるまでにかなりの時間がかかるということがあります。

貸金庫を開けるまでの間に、相続人の間で相続財産の分割方法について合意が成立したのに、貸金庫を開けたタイミングで遺言書が見つかってトラブルになる。なんてこともあります。

また、自宅で保管をしておく場合は、そもそも遺言書自体が、相続人の方々に見つけてもらえないという恐れもあります。

法務局に遺言書を預けておくことができる。「法務局による遺言書保管制度」

このようなトラブルにならないように、法務局の遺言書補完制度という制度を使って遺言書を預かってもらうこともできます。

所定の大きさ(A4)の紙で遺言書を作成したのち、法務局に持参して手続きを行えば、その方が亡くなるまで遺言書を保管してもらえます。

また、遺言書を預けた人の死亡届が提出されると、あらかじめ登録していた相続人などの住所あてに郵便で連絡をしてくれるというサービスもついています。

遺言書保管制度を使うと、相続手続きの時に必要な、「検認(裁判所で正式な遺言書と認めてもらう手続き)」という手続きも必要なくなるため、便利です。

費用は、1件の遺言書の保管を依頼するごとに、3900円です。

費用が少しかかる公正証書遺言(こうせいしょうしょゆいごん)

公証役場という役場で、公証人という法律の専門家に作成してもらう遺言書が「公正証書遺言」です。

費用は、公証人手数料令という法律で決められており、資産3000万円を一人の息子に遺す遺言書であれば、約4万円程度で作成ができます。

財産額や、財産を遺したい相手の数によって費用感が変わってきますが、10万円以内で作成できることが多いでしょう。

自筆証書遺言との違いは、公証人という専門家が作成してくれること。

公証人とは、元裁判官等の経歴をもつ、法律の専門家です。

役人のお墨付きがつくため、後日遺言書の有効性について、争いになることを避けるメリットがあります。

また、遺言書保管制度を使った場合と同じく、「検認」が必要ない遺言書を作成できます。

ただし、公証人は法律の専門家なので、

 

①相続発生後の手続きの便宜なども踏まえて助言すること

②相続税のことなどを考えて助言すること

 

などは、あまり得意ではありません。

相続発生時の手続きなどについても相談したい場合や、税金についても相談したい場合は、弁護士や司法書士、税理士などの専門家に相談するのがよいでしょう。

この場合には、依頼した専門家がこちらの希望を聞いて遺言書の案文を作成してくれます。

もちろん、案文作成には手数料がかかりますので、その点には留意しておきましょう。

手数料の相場は10万~20万程度となっています。

生前の認知症対策もできる家族信託

家族信託には、認知症対策の機能の他に、相続後の財産の承継先を決める機能があります。

つまり、家族信託を利用しておけば、遺言書を作成したのと同じ効果を得ることができるのです。

面倒な相続手続きを、すべて財産を預かっている方(受託者)が行えるため、相続手続きもスムーズです。

家族信託を利用するための費用は、信託したい財産額によって変わりますが、3000万円の金銭を信託する場合で、おおよそ30~40万円程度が相場となっています。

最初こそ、すこしまとまった費用がかかりますが、しっかりとした財産管理と遺産相続のことを考えると、検討する価値のある制度であると言えます。

まとめ

以下、今回ご紹介した3つの方法をまとめていきます。

自筆証書遺言

最も費用が掛からない遺産相続の対策は、自筆証書遺言で、費用は0円で行うことができます。

法務局による遺言書保管制度は、3900円の費用で利用ができ、検認が必要ない遺言書を作成することができます。

公正証書遺言

後日、遺言書の有効性を争ってトラブルになるようなことを避けたい場合には、公正証書遺言を利用することがお勧めです。

手続き費用としては、3000万円程度の財産を1名に相続させたい場合には、4万円程度で作成できます。

財産額と、財産を遺したい相手の数によって、費用が変動しますが、おおむね10万円以内で作成できることが多いでしょう。

家族信託

遺産相続の対策とともに、認知症対策も行ったほうがいい場合は、家族信託の利用もお勧めです。

サポートをする専門家によって、料金形態は異なりますが、3000万円の金銭を信託する場合で、おおよそ30~40万円程度で利用できるでしょう。

 

遺産相続は、一大プロジェクト。費用の安さよりも家族の安心安全を優先しなければならない場合もあると思います。

自分にあった遺産相続対策がなになのか、一度専門家に相談してみるのがよいでしょう

 

この記事の監修者

司法書士 梶原隆央(かじわらたかひさ)
神奈川県出身
平成21年司法書士資格取得
トリニティグループの信託部門にて、 実家信託から信託財産数億円に及ぶ信託、 自社株式の信託等、幅広く信託案件に対応。