民事信託とは何か?家族信託との違いは?

2021年05月14日

民事信託とは、信託法という法律に基づく個人の財産管理手法の一種です。

主に高齢者の財産管理のために活用されおり、日本の高齢化の進行を背景に、その注目度は年々増加しています。

この記事では、民事信託について、簡単にわかるようかみ砕いて解説をしていきます。

そもそも信託とは何か?

信託と聞くと、最初に思い浮かぶのは「投資信託」という言葉かもしれません。

投資信託は、信託会社や信託銀行に自分の財産を預けて、自分の代わりに投資運用してもらうというものですね。

信託とはその文字通り、自分の財産を他人に「信じて託す」行為を言います。

投資信託の場合は、信託会社や信託銀行を信じて自分の財産を託し、投資運用してもらう、という形です。

物の売り買い(売買)や貸し借り(賃貸)と同じように、法律によってルール化されており、誰でも信託という行為を利用できるようになっています。

※売買や賃貸は民法で、信託は信託法で規定されています。

民事信託とは何か?

「信じて託す」のが信託であることはご理解いただけたかと思います。

では、「民事信託」とは何なのか?

「民事」と聞くとなんかだ物々しい印象を受けると思いますが、何のことはありません。

個人間で信託を行うことを民事信託と言います。

なぜわざわざ「民事」という言葉がついているのかというと、この後ご紹介する「商事信託」との区別を明確にするためです。

商事信託との違い

早速「商事信託」とは何かについてみていきましょう。

商事信託とは、この記事の冒頭で触れた「投資信託」のことです。

もう少し詳しく解説しますと、商業目的、つまり、ビジネスとして展開されている信託を商事信託と言います。

投資信託で言えば、信託会社や信託銀行は、預かった財産を運用するにあたって、預け主から手数料を受け取りますよね。

彼らはビジネスでやっているのでそれが当たり前であり、そのような信託を、商事信託と言うということです。

つまり、その逆である民事信託は、ビジネス目的ではない信託のことを言う、ということです。

家族信託との違い

「家族信託」という言葉もよく耳にすると思います。

民事信託と家族信託の違いですが、実は、ほとんど同じ意味で使われています。

正確にいえば、家族信託は「家族」というだけに、信託をする人とされる人の関係性として、家族間であることを想定した言葉となりますが、民事信託においても、信託する人とされる人の関係は基本的に家族になりますので、意味的な違いはほとんど生まれないのです。

なので、民事信託と家族信託は「同じもの」として理解してしまって問題ありません。

なぜ民事信託が活用されるのか

民事信託は、冒頭で触れたとおり、高齢者の財産管理の方法として活用されています。

そもそも「高齢者の財産管理」って何なの?と思われる方もいらっしゃると思いますので、その点から解説していきます。

高齢者の財産管理の必要性

高齢になり判断能力などが低下すると、振り込め詐欺に遭ってしまう、悪質業者につかまってしまう、といった、犯罪に巻き込まれて財産を棄損してしまうリスクが高まります。

また、認知症が進み、物事の判断などができなくなってしまうと、銀行口座からお金が下せない、不動産の売却ができない、といった、本人の財産管理において重大な問題が発生してしまうリスクがあります。

この様に、加齢によって能力が低下した方の財産は何もしないと非常に危険な状態となってしまうのです。

民事信託が選ばれる理由

上記のリスクに対抗する手段として、国が用意している「成年後見制度」という制度がありますが、この制度は家庭裁判所や後見人という第三者の介入があり、後見人に報酬の支払いが発生するという経済的な負担もありますので、できればその利用は避けたいところです。

民事信託は、成年後見と同じように高齢者の財産を第三者が管理できるうえ、その第三者にも家族を選ぶことができるので、成年後見に代わる制度として、利用者が急増しています。

成年後見制度の申立件数は毎年35,000件程度でずっと横ばいなのに対し、家族信託の件数を表す、不動産の信託登記の件数は年々増加しており、平成27年には4,257件だったものが、わずか4年後の令和元年には10,071件と倍以上の増加を見せ、今もなお増加し続けているのです。

まとめ

以上、「民事信託とはなにか?」について解説をしてきました。

民事信託とは、商事信託と対をなす言葉であり、信託会社や信託銀行ではなく、個人を相手取って財産を託す制度であること。

民事信託は家族信託とはほぼイコールであること。

民事信託は、高齢者の財産管理の方法として、成年後見制度に取って代わる制度であること。

この3点のポイントを押さえておいていただければと思います。

この記事では、全体像をつかんでいただくことを最優先し、民事信託の細かい仕組みや成年後見制度の詳細については触れていないので、もう一歩踏み込んだ部分にも知っておきたいという方は、以下の記事も参考にしてみてください。

家族信託とは何か?わかりやすく解説をします。

家族信託と成年後見の違いは?どちらを使うべき?

 

この記事の監修者

司法書士 梶原隆央(かじわらたかひさ)
神奈川県出身
平成21年司法書士資格取得
トリニティグループの信託部門にて、 実家信託から信託財産数億円に及ぶ信託、 自社株式の信託等、幅広く信託案件に対応。