家族信託で受託者になれるのは誰?

2021年06月04日

 

今回は、財産を預かる立場である「受託者」について解説します。

誰が受託者になれるのかという点は、家族信託のご相談の中で、よくいただくご質問です。

その中でも、今回は、

①未成年者
②家族(子、孫などの直系親族)以外
③複数名
④委託者
⑤受益者

の5つの立場・状況にある方が、家族信託の受託者になりうるか、解説していきます。

①未成年者

【例】未成年者の孫

 

⇒この場合、お孫さんを受託者にすることはできません

信託法で、未成年者を受託者とすることはできない、と定められているためです。

根拠は、信託法第7条です。

【信託法第7条:信託は、未成年者を受託者としてすることができない。】

未成年者は社会的にまだ未熟であることが考えられ、他人の財産を、自己の責任で管理する役割を担うには不適切であると考えられているんですね。

②家族(子、親などの直系親族)以外

【例】甥、姪、おじ、おばなど直系親族以外の人、血縁関係のない第三者

 

⇒いずれも受託者にすることができます。

信託法第7条(未成年者は受託者となれない)以外に受託者になれる人を制限する規定がないためです。

家族信託は、名称に「家族」とついているので、その名の通り家族間でしかできないのでは?と考えがちですが、実は家族間でなくてもできるのです。

民事信託を誰にでもわかりやすくする意味で「家族信託」という名称が用いられているにすぎません。

③複数名

【例】長男、次男2人両方に受託者になってほしい場合

 

⇒2人とも受託者とすることはできます。

信託法上に複数の受託者を想定した規定が存在します。

ただし、複数受託者を定める場合の注意点があります。

それは、信託契約の中に受託者それぞれの権限が定められていない場合、受託者の過半数の一致が必要となる点です。

仮に、例のように長男、次男の2人を受託者として定めた場合、受託者2人の過半数の一致とは、つまり、2人の一致が必要ですので、仲違いしてしまった場合には、受託者の権限行使ができなくなってしまうといったリスクがあります。

そのため、「信託契約に長男・次男とも関与してほしい」という場合には、2名とも受託者とするのではなく、長男を受託者とし、次男を受託者の監督をする立場である「信託監督人」とする方法で代用することも考えられます。

④委託者

財産を預ける人と預かる人が同じなので、意味がないのでは?と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、「自己信託」といって信託法上、委託者が受託者となる形も想定されています。

自己信託とは、委託者自ら受託者となって、「他人のために」自分の財産を管理運用することをいいます。

この「他人(受益者)のために」といった点がポイントです。

 

【例】親御さんが自分の財産の委託者兼受託者となり、障がいのあるお子様を受益者として、そのお子様のために自分の財産を管理する場合

⑤受益者

受託者とは、受益者のために信託された財産を管理運用する立場なので、自分のために信託するのでは、あまり意味がないのでは?と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、信託法上、この形の信託を想定した規定も存在します。

 

【例】委託者兼受益者がA、受託者がBの場合に、信託契約の規定により、Aの死亡により受益者がBとなる場合

 

⇒この場合、受託者と受益者が完全に一致してしまいますが、この状態でも1年間は信託の効力を維持することができます。

逆に、この状態で1年経過すると信託の終了事由に該当します(信託法第163条第2号)。

信託法第163条第2号は「受託者が受益権の全部を固有財産で有する状態が一年間継続したとき」に信託が終了すると規定しています。

 

【例】委託者兼受益者がA、受託者がB、信託契約の規定により、Aの死亡により受益者がB、C、Dとなる場合

 

⇒CとDという受託者ではない受益者がいるため受益者と受託者は完全一致していないので、終了事由には該当しません。

信託を継続する利益があり、信託はそのまま継続します。(1年経過後も終了しません。)

ただし、このような受益者連続型信託の場合に、受託者と受益者が一致してしまうケースでは、受託者が相続税法上の「特定委託者」の論点に注意が必要です。

なお、特定委託者については、以前のコラム(【家族信託のリスク!?】特定委託者課税のリスクと対策を解説します!)でご説明いたしましたので、ぜひ、そちらもご覧ください。

まとめ

「家族信託で受託者になれるのは誰か?」について、ご説明いたしました。

家族信託という名称でありながら、家族以外でも受託者になれる、という点がポイントです。

頼れる家族がいない方でも、家族信託を活用できる可能性はあるということです。

受託者を誰にするかは、家族信託をするにあたって非常に重要なポイントになりますので、じっくり検討し、わからないことがあれば、専門家に相談するようにしましょう。