家族信託を開始するのに条件は付けられる?

2021年06月16日

家族信託をするうえでの悩みどころの一つに、家族信託の開始時期があります。

「認知症対策と言っても自分はまだまだ元気だよ」

「今すぐに受託者に財産を移転するのもちょっとな・・」

そのように家族信託を躊躇される委託者の方もいらっしゃると思います。

こんなときには、家族信託の開始時期を、委託者が納得しやすい時期に設定するように検討をしていきます。

今回は、家族信託の開始時期を調整する方法について解説していきます。

家族信託の開始時期はいつ?

信託法によれば「委託者となるべき者と受託者のなるべき者との間の信託契約の締結によってその効力を生ずる」と規定されています。

すなわち、信託契約をしたときに家族信託がスタートすることになります。

これが原則ですが、信託契約には停止条件や始期をつけることもできます。

この場合には開始時期を契約時から遅らせることができます。

停止条件とは?

「停止条件」というのは法律用語であり、字面からは少し意味が分かりづらいので少し解説します。

停止条件とは、ある条件が成就するまで効力を停止しておくことです。

逆に言えば、ある条件が成就した時にその効力が発生します。

例えば、「テストで100点を取ったらお菓子を買ってあげる」という場合、100点を取るまではお菓子を買うという効力が停止されていますが、100点を取ったらお菓子を買ってあげるという効力が発生します。

条件成就と共に効力が発生するということです。

日常会話でいうところの「条件付で~」と同義です。

始期とは?

将来確実に到来する時期のことです。

例えば、「12月31日の到来」というように確定された時期もあれば、「次に雨が降ったとき」などの不確定な時期もあります。(雨はいつ降るか不確定ですが、いつかは必ず降ります。)

先ほどの停止条件との違いは、いずれも必ず生じる事実に基づいている点です。(条件は成就しない可能性があるものを指します。テストで100点、ずっと取れない場合も考えられますよね…)

家族信託の開始時期を遅らせる方法!

家族信託の開始時期を遅らせたい場合は、上記のように停止条件や始期付きで家族信託をするという方法もあります。

ですが、以下のとおりそれぞれに注意点もあります。

停止条件付き家族信託

例えば「認知症になったら家族信託の効力を発生させる」という方法です。

これであれば、「まだまだ元気だし…」と言って家族信託を躊躇している委託者さんも手続きを進めやすくなります。

この場合、認知症になるまでは家族信託の効力は発生しないので、信託契約後も信託する財産を受託者に移転させる必要はありません。

ただし、停止条件付信託を活用する場合、その条件の付け方には注意が必要です。

例えば、「認知症になったら」とは、どの段階を言うのでしょうか?

単に「認知症になったら」という条件では客観性がありません。

客観性がない条件を付した場合には、条件成就=効力の発生時期が明確になりません。

すなわち、効力の発生がはっきりしないということは、後日、信託の効力が否定される可能性があるということです。

そのため、停止条件付き家族信託をする場合は、条件の客観性と明確性が必要です。

例えば、「認知症になったら」ではなく、「医師の診断書において後見相当であるとされたとき」、「要介護認定において要介護5と認定されたとき」などとすれば、客観性も明確性も明らかになります。

停止条件付き家族信託をする場合は、上記のように、客観的かつ明確である条件になるように注意しましょう。

始期付き家族信託

例えば、始期(開始時期)を2031年の1月1日としていた場合には、その日が来たら効力が発生します。

始期の定め方も、確定期日(2031年1月1日など)と、不確定期日(次雨が降ったときなど)があり、定め方によっては、客観性・明確性の点で問題になる場合もあり得るので、注意しましょう。

家族信託の開始時期を工夫する場合には、確定期日を定めたい場合には始期付きのものとし、そうでない場合には、(条件の客観性・明確性に留意したうえで)停止条件付とするのがいいでしょう。

任意後見契約を併せてしておく

停止条件や始期を付して家族信託をしたとしても、家族信託の効力が発生するときに本人が判断能力を失っていたら意味がありません。

家族信託契約の効力が失われるわけではありませんが、信託財産に不動産がある場合には効力発生時に登記が必要ですし、金銭の場合でも預貯金口座を移し替えるなどの手続きが必要であるところ、委託者がそれをすることができずに、手続きが止まってしまいます。

登記をする際には、通常、司法書士が関与し、司法書士は依頼者の本人確認を行います。

そのときに本人の意思が確認できなければ司法書士は登記をすることができません。

登記は司法書士に頼まずに行うこともできますが、いずれにしろ登記申請行為には意思能力が求められますので、手続きはできない、ということになります。

信託財産に金銭がある場合も同様です。預金を信託口座に移す場合に、本人の意思が確認できなければ銀行は対応してくれないでしょう。

そのため、家族信託契約と一緒に任意後見契約を結んでおきます。

任意後見契約をあらかじめ締結し、任意後見人が登記や銀行の手続きを代理できるようにしておけば、家族信託の効力発生時に本人が判断能力を失っていても、任意後見人(家族信託の受託者と同じ人がベストです)が、登記や金銭の信託口座への移し替えなどの手続きも行えるようになります。

まとめ

以上のとおり、原則として家族信託のスタート時期は「信託契約時」ですが、「停止条件」や「始期」を付すことによって、スタート時期を遅らせることもできます。

委託者が家族信託を即座に開始することに躊躇する場合に役立つ方法です。

停止条件や始期をつける場合には、条件などの付し方に注意をしつつ、効力発生時期に備えて家族信託契約と一緒に任意後見契約を結ぶことも忘れないようにしましょう。

 

 

この記事の監修者

司法書士 梶原隆央(かじわらたかひさ)
神奈川県出身
平成21年司法書士資格取得
トリニティグループの信託部門にて、 実家信託から信託財産数億円に及ぶ信託、 自社株式の信託等、幅広く信託案件に対応。