家族信託の受託者はいつでも辞任することができるのか?

2021年06月23日

親の認知症対策として家族信託をする際に、お子様にあたる相談者の方から

「私が受託者になったとして、途中で辞めることはできるのでしょうか?」

とのご質問をいただくことがあります。

家族信託において、委託者の財産の管理、運用、処分の権限を有する受託者はとても重要な役割を担います。

一方で、受託者として課される義務も大きく、将来、健康上の問題などによって、受託者としての任務を全うすることが困難となる場合もあり得るでしょう。

そこで、この記事では、「受託者になった後に、自分の意思で辞任することができるのか?」について解説します。

受託者が辞任できる場合とは?

受託者は、委託者及び受益者の同意を得られれば、いつでも辞任することができます(信託法57条1項)。

委託者及び受益者の同意を得ることが前提となりますので、もし委託者及び受益者が認知症などにより、同意をすることができない状況となってしまうと、委託者及び受益者の同意による辞任はできなくなってしまいます。

受託者の辞任への同意も法律行為であるため、同意をする委託者兼受益者の親の意思能力が必要となります。

委託者兼受益者が同意することができない状況を回避するには?

では、委託者兼受益者が意思能力を喪失し、受託者の辞任の同意ができないような状況に陥ることを回避し、受託者が辞任することができるようにする手段はあるのでしょうか?

信託法57条1項は、「ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる」として、同意による辞任以外にも、信託契約の内容として辞任の方法を定めて置いた場合には、その方法によって辞任ができることを定めています。

そこで、例えば以下のような規定を信託契約の中に入れておくことで、いざというときには受託者が辞任できる道を残しておきます。

「当初受託者(信託契約当初の受託者のこと。)が辞任しようとする場合において、その後継の受託者がその就任を承諾したときは、信託法第57条第1項に規定する委託者及び受益者の同意があったものとみなす。」

上記の規定があれば、後継受託者の就任時点で委託者及び受益者である親の意思能力が喪失していたとしても、後継受託者の就任について、その就任までの受託者不在の期間を発生させずに済みます。

前提として、信託契約の締結時に、その内容として万が一の時の後継受託者に関する規定も入れておく必要があります。

通常は、少なくとも第二受託者までは誰が担うのか具体的に契約書に入れておくことが多いです。

後継の受託者の選び方はどのように決めておくのか?

では、辞任する受託者の後継受託者をどのように決めておけば良いのでしょうか?

家族信託において、受託者は、子や孫、甥、姪といった委託者兼受益者の下の世代がなることがほとんどです。

しかし、この受託者が委託者兼受益者の親より先に、亡くなってしまうことや、意思能力を喪失してしまうことも、ありえなくはないですよね。

そこで、家族信託を組成する場合には、万が一に備えて、信託契約に予め後継受託者を定めておきます。

その定め方としては、例えば、当初受託者の兄弟や子(委託者兼受益者から見て孫)など、具体的な人物を定めておく形が多いです。

ただし、具体的な人物を信託契約時に想定できない場合には、後継受託者を選任する方法を定めておきます。

例えば、次のような協議による選任方法などです。

「当初受託者の任務が終了したときは、受益者(受益者代理人が選任されている受益者については、当該受益者代理人)及び当初受託者の法定相続人全員の協議により、その後継の受託者となる者を指定する。」

まとめ

以上のとおり、受託者は、委託者及び受益者の同意を得れば、いつでも辞任することができます。

しかし、いつでも自由に辞められるわけではなく、委託者及び受益者の同意を得ることが前提であるため、もしその同意が得られない状況であれば辞任が困難になります。

そこで、予め信託契約に次のような定めをしておくことで、同意を得られないという状況を回避しておくことが重要です。

・受託者の子や兄弟等、特定の人物を後継受託者とする定め又は後継の受託者の選任方法

・後継受託者がその就任を承諾した際には、委託者及び受益者の同意があったものとみなす定め

家族信託を組成する場合には、受託者が辞任することも想定し、後継の受託者の決め方もぜひご検討ください。

 

 

この記事の監修者

司法書士 梶原隆央(かじわらたかひさ)
神奈川県出身
平成21年司法書士資格取得
トリニティグループの信託部門にて、 実家信託から信託財産数億円に及ぶ信託、 自社株式の信託等、幅広く信託案件に対応。