家族信託における不動産取得税

2021年06月29日

家族信託を活用するうえでは、家族信託によって発生する税金についてもしっかりと理解しておく必要があります。

この記事では、不動産を家族信託する場合における、不動産取得税の課税・非課税関係についてお伝えします。

不動産取得税の税率

不動産取得税は、通常、売買や贈与で不動産を取得した場合に問題となります。

不動産取得税の税額は、

原則 固定資産税評価額 × 4% です。

ただし、下記の2つの例外があります。

 

①土地及び住宅については、税率 3%(令和6年3月31日まで)

②宅地については、その評価を固定資産税評価額の2分の1

 

実際に計算してみましょう。

例えば、1000万円の宅地を取得した場合、

1000万円×1/2(宅地の例外)×3%(土地の税率)=15万円(税額)

となります。

上記のとおり、決して安くない金額が課税されます。

家族信託を検討する場合には、相続税や贈与税とともに、その課税非課税の判断は、注意すべきポイントです。

不動産取得税が、かかる場合、かからない場合。

家族信託における不動産取得税についてのポイントは、次の4つです。

下記、簡単ですが、順に説明しますね。

【1】委託者から受託者への信託に基づく所有権の移転 ⇒ 非課税

信託をすると、委託者から受託者へ不動産の所有権が移転するため、受託者は、信託不動産を取得することになります。

不動産取得税は、不動産の取得(所有権の移転)に課税されるため、原則どおりであれば、受託者への不動産取得税が課税されることになりますが、地方税法には、例外規定が設けられており、信託開始時の委託者から受託者への不動産の移転は、非課税とされています。(地方税法 第七十三条の七)

【2】受益者の変更(相続や売買等原因は問わない。) ⇒ 非課税

受益者の変更は、つまり受益権の相続や譲渡を意味します。

受益権が相続又は譲渡の対象となっているため、不動産の所有権の移転はありません。

よって、不動産取得税は課税されません。

【3】信託終了時に、当初の委託者の相続人に不動産を引継ぐ場合 ⇒ 一定の要件を満たせば非課税

事例に基づき説明をいたします。

例えば、

 

・委託者兼受益者 A

・受託者 B

・財産の帰属権利者 Aさんの子C

 

とする信託があったとします。

Aさんが死亡し信託が終了する場合、信託契約の規定のとおり、その残余財産はAさんの子Cさんに引き継がれることになります。

この場合、受託者BからCへ信託不動産が移転することとなるため、通常は、不動産取得税が課税される場面です。

しかしこのケースでは、そもそも信託をしなければ、その不動産はCに相続されていたものであり、Cに不動産が承継されるのであれば、通常通り相続された場合と同様、不動産取得税は課すべきではないという意図があるようです。(地方税法 第七十三条の七)

注意が必要なのは、このケースでは、

「信託の効力が生じた時から引き続き委託者のみが信託財産の元本の受益者である信託」(地方税法 第七十三条の七)であること、

すなわち、「信託開始時から、委託者=受益者の構造が崩れていないこと」を要件としています。

専門的向けの内容ですが、信託契約書を作成する際、契約の中に委託者の地位が相続される旨を明記するなどして、「委託者=受益者」の構造が崩れないように注意します。(専門家の方でこの記事を読んで頂いている方は、この論点にはご注意ください)

【4】受益者連続型信託で、委託者の孫へ不動産を引継ぐ場合 ⇒ 課税

【3】のパターンで、残余財産の帰属権利者がCさんの子Dさんにだった場合はどうでしょう?

この場合、地方税法の例外の要件に該当しません。(地方税法 第七十三条の七)

従って、受託者からDさんへ信託財産が引継がれる場合、不動産取得税が課税されます。

まとめ

いかがでしたか?

不動産取得税については、毎年都道府県から納税の通知書が届きます。

都道府県は、不動産登記簿の情報を形式的に把握し、納税の通知書を送付するため、登記簿上からは把握できない相続関係等が存在すると、本来課税すべきでない不動産の取得に対して、納税通知書が送付されてしまうといったことも起こり得ます。

通知書送付の取り扱いは自治体によってまちまちであり、さらに、担当職員の知識レベルや認識もまちまちです。

読者の皆様におかれましては詳しく理解しておく必要はありませんが、突然の納税通知書等にびっくりしないよう、頭の片隅にでも置いておいて頂ければと思います。

 

 

この記事の監修者

司法書士 梶原隆央(かじわらたかひさ)
神奈川県出身
平成21年司法書士資格取得
トリニティグループの信託部門にて、 実家信託から信託財産数億円に及ぶ信託、 自社株式の信託等、幅広く信託案件に対応。