暦年贈与に家族信託は使える?

2021年06月29日

日頃、家族信託に関するご相談を受けていて、よくいただく質問の一つに

「委託者(兼受益者)である親が認知症になった後でも、受託者が親の代わりに信託した金銭から子・孫への暦年贈与が実行できますか?」というものがあります。

今回は、家族信託と暦年贈与というテーマでお伝えします。

なぜ暦年贈与に家族信託を活用できると考えるのか?

家族信託は、高齢の親御さんの認知症対策に使われる財産管理の手法です。

親御さんが委託者兼受益者となって信頼できるお子さんに金銭や不動産等の財産を託し、お子さん=受託者が託された財産の管理・運用・処分を行います。

受託者が信託された財産に関してどのような権限をもつのか、どのように財産を管理していくのかは、すべて信託契約書に定めていきます。

では、委託者である親御さんが、信託契約書に「まとまった金銭を信託するので、子と孫に毎年それぞれ100万円ずつ贈与してほしい。自分の判断能力が低下した後でも続けてほしい」と定めた場合、

受託者が自身で判断して贈与を実行し続けることができるのでしょうか?

残念ながら、実行するには解決しなければならない問題がいくつかあります。

受託者のみの判断で暦年贈与を行うことができるか?

信託法上、受託者は受益者のために信託財産を管理する義務を負います。

したがって、信託契約に子や孫に対する暦年贈与を許容する定めがあったとしても、

受益者ではない子・孫に受託者のみの判断で信託された金銭を贈与することはできません。

もし、家族信託を組成した後に信託金銭を贈与したいのであれば、以下の方法をとるのがいいでしょう。

 

①委託者と受託者で信託契約を変更し、子・孫も受益者とする。

②委託者兼受益者である親から子・孫に対して受益権を贈与する。

 

どちらも、親御さんが当事者となって実行することですから、親御さんが認知症等により判断能力が低下した後はできなくなることに注意が必要です。

定期贈与とみられる可能性も

財産の贈与を受けた人には贈与税が課されますが、贈与税には年間110万円までの基礎控除が認められています。

基礎控除とは、「贈与された金額が年間110万円までであれば、贈与税はかかりません。」という仕組みのことです。

暦年贈与は、この基礎控除を利用し、金銭を一気に贈与するのではなく毎年少しずつ贈与していくことで、特に現預金をたくさんお持ちの方の相続税対策として利用されます。

この暦年贈与を行ううえで、「暦年贈与のつもりで行っていたが税務書から定期贈与とみなされてしまう」ことは避けなければなりません。

暦年贈与と定期贈与の違いとは?

暦年贈与は、その都度贈与者と受贈者が契約を交わし、贈与を行っていきます。

毎回毎回の贈与はそれぞれ独立した行為になります。

一方の定期贈与とは、「1100万円を毎年110万円ずつ10年間に渡って贈与します。」と定めることです。

つまり、贈与を受ける人は初めから1100万円もらえることが決まっており、それが贈与契約からも読み取れる状況を指します。

定期贈与ととられてしまうと、1100万円一括で贈与したものとみなされ、1100万円に対して贈与税が課されてしまいます。

これを家族信託にあてはめるとどうなるでしょうか?

例えば、信託契約の中に受託者の金銭管理方法として、「受益者である子・孫に毎年110万円の金銭を今後10年間に渡って信託財産から給付してほしい。」と定められている場合は、定期贈与と捉えられる可能性が高いでしょう。

まとめ

今回は、「家族信託と暦年贈与」というテーマでお伝えしました。

暦年贈与は家族信託を活用して受託者にしてもらうのではなく、親御さんから子・孫に直接行うのがよいでしょう。

そのうえで、親御さんの判断能力の低下により途中で暦年贈与が中止となってしまうリスクをカバーしておきたいのであれば、生命保険等を活用する方法もあります。(生命保険の活用については、また別の記事で触れられればと思います。)

トリニティでは、家族信託に限らず資産承継の様々なご相談を承っております。

ぜひお気軽にお問合せください。

 

 

この記事の監修者

司法書士 梶原隆央(かじわらたかひさ)
神奈川県出身
平成21年司法書士資格取得
トリニティグループの信託部門にて、 実家信託から信託財産数億円に及ぶ信託、 自社株式の信託等、幅広く信託案件に対応。