家族信託契約を無効にしたいときはどうすればよいか?

2021年07月02日

家族信託契約を締結したものの、なんだか相続税の関係からは問題がある契約内容になっていると税理士から言われた…。

自分の知らない間に他の兄弟が父と家族信託契約を締結していた!不当だから、無効にしたい!

など、一度締結した家族信託契約を無効にしたい、させたい、という場合もあるでしょう。

このような時は、どうしたらよいのでしょうか?

本記事では、この点について考えてみましょう。

合意終了

委託者及び受益者は、いつでも、その合意により、信託を終了することができるのが原則です(信託法164条)。

家族信託においては、委託者と受益者は同一人であることがほとんどですが、この場合には、1人で合意して終了させることができることになります。

ただし、信託契約に別段の定めがある場合は、その定めによるとされています。

なので、信託契約において信託の終了に関する別段の定めをした場合には、この信託契約の定めに従って、終了させていくことになります。

なお、いずれにせよ、信託契約をした当事者(委託者、受託者、受益者)の合意があれば終了させることができます。

後見人から終了

委託者兼受益者が、認知症になってしまった場合は、前述の合意による終了はできないことになります。

この場合は、成年後見人選任の申立てをして、委託者兼受益者に後見人が選任されれば、後見人が本人を代理して合意による終了をすることができるようになります。

後見人は、成年被後見人の代わりに財産管理や身上監護を行う権限を有していますから、財産管理の権限においては、受託者に似た権限を有することになります。

もっとも後見人は成年被後見人本人の利益の保護のために、職務を行いますから、自由な財産管理を行うことは難しくはなります。

なお、信託契約に別段の定めがある場合は、後見人単独では信託を終了させることはできない場合も考えられます。

その場合に取りうる他の手段としては、裁判所の命令によって信託を終了させるというものがあります。

信託法165条は、信託契約の当時予見することのできなかった特別の事情により、信託を終了させることが、受益者の利益に適合するに至ったことが明らかなときは、申立てにより裁判所は信託の終了を命ずることができる。と定めているので、この規定を利用するのです。

訴訟提起

信託契約の締結行為が無効である場合には、裁判によってそのことを明らかにし、信託契約をなかったものにすることができます。

例えば、契約の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その契約行為は、無効になります(民法3条の2)。

したがって、いつの間にか父が他の兄弟と信託契約を締結してた、という場合に、その契約が手帰結された時期に、実際に父が認知症であり、意思能力がなかったのであれば、「信託契約当時、父にはその契約を締結する能力などなかった」として無効を主張することが考えられます。

公正証書によって、信託契約を締結した場合であっても、裁判により信託契約が無効とされる場合はあり得ます。

公証人が信託契約公正証書を作成する場合は、契約締結の際に委託者の本人確認、意思確認を行いますが、その判断も絶対でないということです。

ただし、その無効を立証する負担は、無効を主張する原告側の負担となりますので、簡単ではありません。

また、遺留分を侵害するような信託契約である場合には、公序良俗違反で無効を主張することも考えられます(民法90条)。

いずれにしろ、訴訟提起は費用も時間もかかるため、慎重な検討が必要です。

まとめ

以上、信託契約を終了させる方法、無効とする方法につき、検討してきました。

せっかく締結した信託契約を終了させなくても済むように、きちんとした検討と、他の家族への十分な説明行った上で、信託契約を締結することが重要です。

 

 

この記事の監修者

司法書士 梶原隆央(かじわらたかひさ)
神奈川県出身
平成21年司法書士資格取得
トリニティグループの信託部門にて、 実家信託から信託財産数億円に及ぶ信託、 自社株式の信託等、幅広く信託案件に対応。