家族信託を永久に続けることはできますか?

2021年07月02日

今回は少しマニアックなお話しかもしれません。

テーマは、「家族信託を永遠に継続することはできるのか?」というもの。

例えば、「うちの家系は由緒ある家だから、今後代々、家族信託によって後継ぎを決めて、財産を承継させていきたい。」という方は一定数いらっしゃると思います。

では、家族信託を活用して、後継を将来にわたってすべて決めてしまうような仕組みを作ったとして、その仕組みによって永久に家族信託が継続する、ということになるのでしょうか?

信託の終了事由

まず、家族信託はどのような場合には終了するのかを見ていきましょう。

信託の終了事由については、信託法163条に列挙されています。

主なものを掲げます。

 

1号 信託の目的を達成したとき、又は信託の目的を達成することができなくなったとき。          

2号 受託者が受益権の全部を固有財産で有する状態が1年間継続したとき。

3号 受託者が欠けた場合であって、新受託者が就任しない状態が1年間継続したとき。

9号 信託行為において定めた事由が生じたとき。

 

このうち、予期せず終了してしまうことが考えられるのは、3号の受託者が欠けた場合でしょう。

受託者が個人だと、受託者が死亡した場合に、これに該当して終了してしまう可能性があります。

受託者は個人でなければならないわけではありませんので、受託者を一般社団法人等の法人にしておけば、これを回避することができます。

信託法91条

では、信託の終了事由にあたらなければ、信託は終了しないのかというと、もう一つ、信託法に、信託の期間制限についての規定があります。

信託法91条です。

 

(受益者の死亡により他の者が新たに受益権を取得する旨の定めのある信託の特例)

第91条 受益者の死亡により、当該受益者の有する受益権が消滅し、他の者が新たな受益権を取得する旨の定め(受益者の死亡により順次他の者が受益権を取得する旨の定めを含む。)のある信託は、当該信託がされた時から30年を経過した時以後に現に存する受益者が当該定めにより受益権を取得した場合であって当該受益者が死亡するまで又は当該受益権が消滅するまでの間、その効力を有する。

 

いや、難しい条文ですね。

何を言っているのか非常に分かりづらいです。

この条文は、まず、受益者の死亡により他の者が受益権を取得する旨の定めが信託契約に定められている場合の信託について適用があると言っています。

そして、信託契約から30年後にその定めによって受益者が受益権を取得したら、その人の代まで続くと言っています。

つまり、そこで終了してしまうという期間制限がかけられているのです。

そうすると、受益者が、死亡しない人つまり法人であれば、この条文の適用はないことになりますので、永久に信託を続けることはできます。

商事信託においては、受益者が法人であり、受益権だけ転々と売買がされることもあります。

しかし、家族信託においては、個人の財産を信託するのであり、そのほとんどが自益信託です。

つまり、委託者=受益者であり、個人です。

したがって、必ず受益者は死亡してしまいます。

そうすると、91条の規定からは逃れられないのでしょうか。

受益者が死亡する前に、承継させていく旨の定め

91条の適用範囲に該当しないように、受益権を承継させていけば、永久に続けることができるのではないのか、とも考えられます。

例えば、受益者が死亡する前に、順次承継させていく規定などです。

受益権を取得してから何年後に次の代の者に承継させる、あるいは80歳になったら次の代に承継させるなどです。

条文をそのまま読んだ文理解釈によればあたらないことになりますが、次世代以降の人が拘束され続けるのは好ましくないという趣旨からすれば、認められるかは疑問が残るところです。

学説からも、91条が直接適用できなくても、類推適用や公序良俗(民法90条)違反として、無効となる可能性も指摘されています。

現段階では、できないと考えたほうがよさそうです。

まとめ

今後の学説、判例の蓄積によるところもありますが、家族信託は、永久に続けることはできないと考えておいたほうがよいでしょう。

とはいえ現状のルールにおいても、だいたい50年~100年程度は継続させることができるでしょうから、代々継続させる趣旨での家族信託も、十分活用の価値はあると言えるでしょう。

 

 

この記事の監修者

司法書士 梶原隆央(かじわらたかひさ)
神奈川県出身
平成21年司法書士資格取得
トリニティグループの信託部門にて、 実家信託から信託財産数億円に及ぶ信託、 自社株式の信託等、幅広く信託案件に対応。