家族信託の信託財産は誰のもの?

2021年07月20日

認知症対策のための新たな財産管理の手法、家族信託をご存じでしょうか?

家族信託は、一言で表すと「信頼できる人(家族)に財産管理を信じて託す」ことをいいます。

具体的な例でお伝えしますと、以下のようになります。

Aさん(78歳)は複数の投資不動産と預貯金を保有しています。

これまでは、Aさんが自分で賃貸借契約の締結や管理会社とのやりとり、修繕の実施、銀行での預貯金の出し入れ当を行っていました。

しかし、体調を崩して昨年入院したことがきっかけとなり、今後の財産管理について不安を覚えるようになりました。

そこで、長男にAさんと「家族信託契約」を締結、ご自身が保有していた不動産、金銭を長男に信託し、以降は長男が受託者としての権限をもって託された財産の管理・運用・処分を行っていくことになりました。

Aさんのもとには、「受益権」が残り、投資不動産からあがってくる賃料、長男に信託した金銭は必要経費を除いてすべてAさんの生活・介護等のためにつかっていくお金となります。

以上が、一般的な家族信託の一つの形です。

家族信託で信託された財産は誰のもの?

家族信託をすると、信託財産の管理・運用・処分権は信託契約に定められた範囲で受託者に移ります。

例えば、不動産の賃貸借契約や売買契約の締結、預貯金の信託管理口座からの出し入れ、株式の議決権の行使・・・すべて原則として受益者の関与なく受託者が単独で行うことができます。

一方で、信託された財産にかかる収益(不動産の賃料や売却代金、信託された金銭等)は受益者のものとなります。

信託は「水の上に浮かぶ油」

これは、信託法の第一人者である、故四宮和夫教授の言葉です。

「信託財産は誰のものなのか?」という疑問は、より法律的にいうと「信託財産の所有権は誰に帰属するのか?」という問題になります。

所有権は民法上の概念なので、ここに信託をあてはめようとすると、どうしても相容れない部分が出てくるのです。

信託法上、信託財産は「受託者に属する財産」と定められており、また不動産をAさんから長男に信託した場合は、Aさんから長男に不動産の名義を移すための登記の目的は「所有権移転」になります。

したがって、信託をした場合、所有権は受託者に移転するものと考えられています。

ところが、これまで見てきたように、受託者が所有権を得たといっても、財産からあがってくる収益を受け取る権利である「受益権」を取得するのは受益者です。

民法では、所有権は「自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利」と定められていますが、受託者が取得する所有権は、このような権利とは異なる概念のものです。

まさに、「信託は水(民法)の上に浮かぶ油」、民法の概念からはみ出た不思議な仕組みといえるでしょう。

受益者のもつ「受益権」とは何か?

一方で、受益権とはどのような権利なのでしょうか?

こちらも信託法に定めがあり、大きく次の2つに分けられます。

 

①信託契約に基づいて、受託者に対して信託財産(に属する財産)の引渡しや給付を求める権利

② ①の権利を確保するために、信託法の規定に基づいて、受託者等に対し一定の行為を求める権利

 

①は、受益債権と呼ばれるものです。

例えば、信託契約において「受益者であるAさんは、不動産からあがってくる収益の中から毎月10万円受け取ることができる」と定められている場合、

その定めに基づいて「今月も10万円ください。」と受託者である長男に請求できる権利です。

②は、受益者が信託契約に定められた財産をきちんと受け取るために、受託者の仕事を監督する権利のことです。

具体的には、受益者は信託事務について受託者に報告を求めたり、受託者が信託契約の規定に違反してその任務を遂行しようとした際に、受託者の行為の差止を請求するなどの権利をもちます。

さいごに

今回は、信託財産が誰に帰属するかということ、そして、受益権の内容についてお伝えしました。

トリニティでは、経験豊富な信託プランナーに初回無料でご相談いただくことが可能です!

家族信託の活用をお考えの方、ぜひお気軽にご相談ください。

 

 

この記事の監修者

司法書士 梶原隆央(かじわらたかひさ)
神奈川県出身
平成21年司法書士資格取得
トリニティグループの信託部門にて、 実家信託から信託財産数億円に及ぶ信託、 自社株式の信託等、幅広く信託案件に対応。