共有の不動産を家族信託するメリット・デメリットは?

2021年07月12日

家族信託のご相談をお受けする中に、「うちの土地が父と弟で共有になっているけど、父の持分だけを私(兄)に家族信託できますか?」とのご質問をいただくことがあります。

不動産が共有の場合に、家族信託によりその不動産を受託者が管理することになりますが、そもそも不動産の持分の一部のみを家族信託の財産にすることはできるのでしょうか?

また、共有の不動産を家族信託するメリット・デメリットはどのようなものでしょうか?

今回の記事では、共有の不動産を家族信託するメリット・デメリットについてご説明します。

共有の不動産を家族信託の対象とすることはできるのか?

先ず、共有の不動産について、一部の持分のみを家族信託の対象とすることはできるのでしょうか?

前述の例によると、父と弟(二男)が共有である土地のうち、父の持分のみを対象として家族信託をすることになりますが、このような家族信託は、可能です。

また、父と弟の二人とも、それぞれの持分を兄に家族信託により預けることも可能です。

家族信託の対象となる財産について、信託法上、完全な所有権である必要はないのです。

信託法では、信託財産とは受託者に属する財産として定められたものであって、信託により管理又は処分をすべき一切の財産とされてます(信託法2条3項)。

そして、信託財産の範囲は、信託契約において信託財産に属するべきものと定められた財産をいうため(同法16条)、信託契約において共有の土地の持分を信託財産に属するべきものと定めることで、信託の対象財産とすることができます。

なお、共有持分を信託財産とする場合、その共有持分の名義を受託者に変更する共有持分全部移転の登記の手続きを行う必要があります。

共有の不動産を家族信託するメリットは?

共有不動産の持分の一部について信託することは可能、と解説致しましたが、ここからは、共有状態となっている不動産の持分の「全部(つまり、不動産丸々)」について信託をした場合について論じていきます。

共有の不動産(の全部)を家族信託するメリットはどんなものでしょうか?

そのメリットとしては、以下のものが挙げられます。

 

・持分権者ごとに発生する相続によって持分の名義人が分散するのを防ぐことができる。

・受託者に持分を集めることで、共有不動産の売却を受託者のみで行うことができるようになる。

・共有不動産が収益不動産である場合に、大規模修繕等の共有者全員の同意が必要な行為を受託者のみですることができる。

 

家族信託によって受託者に共有持分の管理処分権限を集めることにより、相続などによる持分の分散リスクを回避することができます。

また、不動産の売却など、共有者全員の同意が必要な行為をする場合に、共有者の一人でも認知症等により判断能力を喪失していると、その必要な行為の同意が得られないという状況になりますが、家族信託をしておくことにより、このリスクを回避することもできます。

共有不動産の様々なリスク回避を目的として、家族信託はとても最適なものであることが、このメリットからお分かりいただけるかと思います。

共有の不動産を家族信託するデメリットは?

一方で、共有不動産を家族信託した場合のデメリットはあるのでしょうか?

不動産の運用、という面では、実はあまりデメリットは考えられないのですが、強いて言えば、家族信託の設定時や終了時に以下のようなデメリットが生じる可能性が挙げられます。

 

・共有持分を集める受託者の選定次第で、共有者同士のトラブルになる可能性

・家族信託の終了時に誰がこの共有不動産を取得するかによってトラブルになる可能性

 

受託者を誰にするかというのは、家族信託をする際にとても重要です。

共有不動産の管理処分権限を一手に引き受けることになる受託者を誰にするのかによって、その共有不動産の持分権者の感情面で「任せたくない」と考えるケースも出てきます。

前述の例で、父と弟の共有の土地を、兄が受託者となってその土地全部の管理権限を得ようとした場合に、弟からすると「なぜ自分で管理できるのに兄が父の分も含めて全部管理しようとしているのか?」と疑念を抱き、兄弟間でトラブルになる可能性もありえます。

また、父と弟が兄に管理を任せるとして、それぞれで兄と家族信託の契約をした場合に、父の家族信託が終了してその持分を弟が取得することになったとしたら、兄と弟との共有状態が新たに発生し、弟の家族信託をしている意味合いが薄れてしまう恐れもあります。

※そうならないように、誰が最後に財産を受け取るかを家族信託の設計時にしっかりと組み立てます。

いずれにせよ、デメリットのほとんどが家族信託の設計時に対策の出来ることですので、共有不動産をそのままの状態にしておくよりも家族信託により受託者に持分を集約しておくメリットの方があります。

まとめ

今回は、共有の不動産を家族信託するメリット・デメリットについてご説明いたしました。

不動産の共有状態は、年月が経つにつれて相続によって共有者が増えてしまう、また、共有者の一部の方が認知症により判断能力を失っていざという時に不動産の処分ができない状態になってしまう等の管理上の不具合を招きます。

今のうちに、家族信託を用いて対策をしておくことをお勧めいたします。

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この記事の監修者

司法書士 梶原隆央(かじわらたかひさ)
神奈川県出身
平成21年司法書士資格取得
トリニティグループの信託部門にて、 実家信託から信託財産数億円に及ぶ信託、 自社株式の信託等、幅広く信託案件に対応。