貸付金がある場合に認知症対策が必要な理由

2021年04月01日

「貸付金は信託できますか?」

80代の父親をもつ男性からと相談で、こんなものがありました。

人に対してお金を貸したのに、返してもらえないと言った話を聞くことはありますが、人にお金を貸したまま、貸主さんが認知症などを発症してしまったら、どうなるのでしょうか?

この記事では、貸付金の回収と認知症対策というテーマでお伝えします。

回収したい貸付金。貸主である親が高齢

ご相談を頂いたのは、50代の男性。

今年80歳を迎えるお父さんの財産についての相談でした。

相談内容をお伺いしたところ、次のようなお話が聞けました。

 

「父親が、友人にお金を貸してあげたらしいのだが、なかなか返してもらえない。」

「弁護士を立てて、返すよう連絡し続けているのだが、なかなか回収ができないので、訴訟を起こすことも検討している。」

「父親は、だんだん体力が衰えていて、判断能力がいつなくなってもおかしくない。」

 

詳しく話を聞いてみると、お父様が友人の頼みで、事業資金として500万円を貸してあげたそうなのですが、その友人はなかなか事業を始めようとせず、お金を返す期限になっても、全く返済する様子がないと言うことでした。

返済を求める為にも、判断能力が必要

お父様は、80歳と高齢になっていると言うこともあり、ご自身の意思で友人にお金を返すように請求する事に疲れている様子でした。

弁護士を立てて請求することにした後でも、この問題について話すこと自体に嫌気がさしていて、半ば回収を諦めていました。

息子である自分が、父親に代わり弁護士に依頼することを検討したところ、弁護士から「お父さん本人からの依頼でないと、相談には乗れない」と言われてしまったそうです。

弁護士に依頼できるのは、あくまで本人であり、息子さんには、代わりに依頼する権限はないと言うことです。

お父様の判断能力は、だんだん落ちて来ていて、いつ意思疎通ができなくなってしまって、意思疎通ができなくなってしまってもおかしくない状況でした。

貸付金の回収と認知症対策

お父様の代わりに貸付金の回収をするために、考えられる方法として、

 

①後見制度を使う方法

②家族信託を使う方法

 

があります。​

いずれの方法を使った場合でも、お父様が意思疎通できなくなった後でも、債権回収の話を続ける事ができますが、それぞれ注意点があります。

①後見制度では、うまく回収できないかも!?

後見制度とは、判断能力がなくなった人の代理人である「後見人」の選任を家庭裁判所に対して、申し立てる制度です。

後見人として選任された人は、お父様の代理人として債権回収の仕事を行う事ができます。

この方法で注意が必要なのは、必ずしも息子さんが後見人となれるとは限らないと言うことです。

家庭裁判所に後見人として選ばれるのは、全体の約70%が親族以外の司法書士などの専門家です。

残り約30%が、子供などの親族が選ばれています。

今回の相談者である男性(息子さん)が、お父様の後見人の選任を申し立てても、ご自身が後見人となれるかどうかは、わからないと言うことです。

司法書士などの専門家が後見人になっても、その方が積極的に債権回収の仕事をしてくれるかどうかは、わかりません。

回収が困難だと早々に見切りをつけてしまうこともあり得るでしょう。

②訴訟を目的として家族信託は使えない!?

家族信託を使えば、息子さんがお父様から、貸付金の権利を預かり、代わりに回収することができます。

ここで注意が必要なのは、「訴訟を起こす目的だけで家族信託を利用することはできない」ということです。

信託法という法律で、「訴訟信託(訴訟を起こす目的の信託)」が禁止されている為です。

ただし、家族信託を利用するきっかけが、「債権回収」を目的としたものであり、「訴訟」そのものを目的としていない場合には、問題にはなりません。

初めのきっかけだけ、訴訟を目的としていないと判断できるのであれば、家族信託を利用して息子さんが代わりに訴訟を起こすことも可能です。

まとめ

回収しなければ行けない貸付金を、そのまま放置してしまうと、貸主さんが認知症を発症してしまうと回収が困難になります。

貸主さんがお元気なうちに、後見制度や家族信託を使って、貸付金の権利を預かって、代わりに回収できるような仕組みを作っておくことが大切でしょう。

 

この記事の監修者

司法書士 梶原隆央(かじわらたかひさ)
神奈川県出身
平成21年司法書士資格取得
トリニティグループの信託部門にて、 実家信託から信託財産数億円に及ぶ信託、 自社株式の信託等、幅広く信託案件に対応。

 

 

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