高齢の親御様が自宅や収益不動産を所有している場合、

・親が自分でいつまで不動産の管理ができるのだろう?
・いざというときに、滞りなく売却して現金化することができるか?

などの不安を感じることもあるのではないでしょうか。

不動産の所有者が家族信託を活用するとどのようなメリットがあるのか、事例を含めて解説していきます。

要約

  • 不動産を家族信託すると、親が認知症になっても不動産の売却・活用・管理などができる
  • 不動産を家族信託すると、兄弟間の共有問題などのトラブル防止ができる
  • 家族信託は任意後見よりも不動産の管理、運用の自由度が高い
  • 不動産を家族信託すると不動産取得税は非課税になる
  • 不動産の管理・運用・売却については事前に契約内をしっかり決めることがポイント
  • 家族信託に詳しい専門家と相談しながら進めていきましょう

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家族信託とはどのような仕組みなのか?

まず、家族信託の仕組みについてご説明します。

家族信託とは家族内で行うことのできる財産管理の方法の一つで、不動産や預貯金などの財産について、その管理・処分を信頼できる家族に任せる仕組みのことです。

家庭裁判所などを通すことなく家族に任せることができるため、信託契約のための費用を除けば、成年後見制度のような専門家への継続的な報酬が発生しません。

家族信託では「委託者」「受託者」「受益者」という3者を決めて、依頼する内容を契約します。
  • 委託者…自分の財産の管理・処分を任せる立場の人
  • 受託者…委託者から財産を引き受けて、信託契約で定めた目的に従ってその管理・運用・処分を行う立場の人
  • 受益者…通常、委託者と同一人物。信託された財産の管理・運用・処分により発生する収益等の利益を受け取る人
家族信託の仕組み

仮に受益者を委託者以外の第三者とした場合、受益者は委託者から財産の贈与を受けた者として贈与税がかかる可能性があるため、一般的には「委託者=受益者」 で信託契約を結びます。

典型的な家族信託の例としては、高齢者である親を委託者兼受益者、その子を受託者とし、親の老後の生活資金を確保するために、親の財産の管理・運用を子が引き受ける、といった形が挙げられます。

家族信託で親の老後の生活資金を確保するために、親の財産の管理・運用を子が引き受ける

家族信託を組成する際には、専門家に相談やサポートを依頼することも可能です。

家族信託の仕組み・デメリット・費用などについては、以下の記事で詳しく解説しています。

家族信託は「認知症による資産凍結」を防ぐ法的制度です。認知症が進行し意思能力を喪失したと判断されてしまうと、銀行預金を引き下ろせない、定期預金を解約できない(口座凍結)、自宅を売却できないなどのいわゆる「資産凍結」状態に陥ってしまいます。そのような事態を防ぐために、近年「家族信託」が注目されてきています。この記事では家族信託の仕組みやメリット、デメリットをわかりやすく解説します。
家族信託とは?わかりやすくメリット・デメリットを徹底解説します

【事例紹介】家族信託で不動産を活用する方法とは?

家族信託では、信託する財産を自由に決めることができます。

そのため所有する不動産を信託し、管理や売却などの手続きを家族などに依頼することも可能です。

家族信託の活用をおすすめすることが多い相談内容は以下の3つです。

  1. 施設への入所で空き家になる家の管理・処分を家族に託したい
  2. 収益物件の管理を自分で行うことが難しくなってきた
  3. 財産管理のできない子に安定的に財産を残したい

ここからは不動産を家族信託した具体的な活用事例について紹介します。

事例1:施設入所で空き家になる家の管理・処分を家族に託したい

施設入所で空き家になる家の管理・処分を家族に託したい

妻を亡くし自宅で一人暮らしをしている高齢のAさんは、老人ホームへの入所を検討していました。
入所後は、自宅は空き家になる見込みです。

Aさんは自宅以外に大きな資産があるわけではないため、将来的には自宅を売って施設の費用や生活資金に充てたいと考えています。

ただし、施設から思い入れのある自宅に戻る可能性も残しておきたいため、今すぐに自宅を売却する気にはなれません。

そこで、Aさんは息子である息子Bさんと家族信託契約を締結し、自宅を信託財産としました。

これにより、万が一Aさんが認知症などになってしまった場合でも、息子Bさんの判断によりいつでも自宅を売却できる ようになります。

当面はAさんの意向を尊重して自宅を空き家のまま管理しつつ、いざというときは息子Bさんの判断により自宅の売却や賃貸といった処分、運用をすることができます。

家族信託契約を締結したことによって、息子Bさんは資金面での不安もなくなり、父であるAさんは安心して施設に入所することができました。

認知症となり判断能力が低下してしまった場合にできなくなる事の代表例として、「不動産の売却」が挙げられます。その理由は、不動産取引の手続きにあります。この記事では、不動産取引の手続きや流れに加え、なぜ代理人を立てても不動産の売却ができないのかについて解説していきます。
【認知症と不動産売買】認知症になったら家は売れない?

事例2:収益物件の管理を自分で行うことが難しくなってきた

収益物件の管理を自分で行うことが難しくなってきた

Aさんは収益不動産を複数所有していますが、高齢になり、賃貸人としての様々な手続きを自分で行うことが難しくなってきました。

そのため、不動産を息子Bさんに譲りたいと考えましたが、今すぐ(生前に)息子Bさんに不動産を贈与すると、多額の贈与税がかかってしまいます。

そこで、息子Bさんと家族信託契約を締結し、収益用不動産を信託財産としました。

これにより、贈与税を負担することなく収益用不動産を息子Bさんが管理・運用できるようになりました。

Aさんは収益不動産の管理から解放されるだけでなく、受益者として収益不動産からの収益を引き続き得られるため、安心して生活できるようになったのです。

事例3:財産管理のできない子に安定的に財産を残したい

財産管理のできない子に安定的に財産を残したい

夫を亡くし自宅で一人暮らしをしている高齢のAさんは、障害があり財産管理をすることの難しい娘Cさんがおり、自分たちが亡くなった後の生活が心配でした。

そこで、財産の管理ができるもう一人の息子B(長男)さんを受託者とする家族信託契約を締結しました。

所有する収益不動産の管理・処分の権限を息子Bさんに与え、母Aさんが亡くなった後は、受益者を母Aさんから娘Cさんへ移す契約内容としました。

これにより、母Aさんは自分が亡くなった後も、障害のある娘Cさんが収益不動産から得た収益を継続的に受け取れる仕組みを作ることができ、将来の不安を軽減することができました。

不動産を家族信託するメリット

不動産を家族信託する上で得られる主なメリットは以下の4つです

  1. 認知症になっても不動産の売却ができる
  2. 不動産を承継する人の順位付けができる
  3. 任意後見よりも自由に不動産の管理・運用ができる
  4. 共有不動産のトラブルを避けることができる

ここからは具体的に解説をしていきます。

1. 認知症になっても不動産の売却ができる

認知症になり意思能力を失うと、自分では不動産を売却できなくなってしまいます。

意思能力が低下すると、契約行為ができなくなる からです。

そのため将来、万が一認知症になってしまう場合にはに備えて、家族信託を利用して家族に自宅の売却を託す方が増えています。
参考: データで見る家族信託

2. 不動産を承継する人の順位付けができる

家族信託を利用すると、二次相続まで含めて不動産を相続させる順位を指定できます。

遺言書の作成でも不動産の相続人の指定ができますが、遺言には限界があり二代先の相続については指定することはできません。

一方、家族信託であれば、自分が亡くなった後(一次相続)に財産を引き継ぐ人だけでなく、その次に財産を引き継ぐ人(二次相続)についても指定することができます。

直系の家族に土地を引き継いでいきたいなど、代々所有している不動産や事業がある場合などの場面で多く活用されています。

3. 任意後見よりも自由に不動産の管理・運用ができる

認知症が進行してしまった場合の対応策として、任意後見制度 があります。

任意後見制度は意思能力を失った本人に代わり、任意後見人が本人の財産の管理などをする制度 です。

任意後見制度は、本人が元気なときに、家族などの任意の人を後見人に指定して契約をしておく制度であり、いわゆる法定後見制度と比較すると、使いやすい制度だと言われています。

ただし、任意後見制度でも家庭裁判所を通さなくてはならず、後見監督人が選定されてから利用がスタートする制度 です。

必ずしも不動産を自由に管理・運用できるわけではなく、基本的にリスクのある資産運用などは制限されます。

任意後見制度は、毎年裁判所への報告書を提出する必要があるなど、後見人に手間がかかり負担も大きくなります。

そのため、資産所有者の判断能力が低下する前に契約をすることができる方法として、家族信託の方が不動産の管理・運用・処分などの自由度が高いと言えます。

4. 共有不動産のトラブルを避けることができる

所有している不動産がある場合、不動産から得られる収益を子達に均等に分けたいという希望もあると思います。

しかし、兄弟間で不動産を共有させた相続が行われてしまうと、いざ売却をしたくなった時に共有者全員が同意しなければ、売却などの処分行為ができないという制限も伴います。

相続した不動産を活用できず、運用も売却もできないような、”塩漬け状態”になってしまうことも多いのです。

家族信託を利用することで、不動産の管理・運用・処分を子のうちの1人に依頼をしつつ、収益は平等に分けるという仕組みを作ることができるようになるのです。

不動産を信託財産にするデメリット(注意点)

不動産を信託財産にする場合の主なデメリット(注意点)は以下の6つです。

  1. 受託者にふさわしい家族がいなければ難しい
  2. 関係者は長期間にわたり拘束される
  3. 直接の節税効果があるわけではない
  4. 委託者が意図しない処分行為がされてしまう場合もある
  5. 信託登記などの手間がかかる
  6. 家族信託に強い専門家が多くはない

ここからは具体的に解説していきます。

1. 受託者にふさわしい家族がいなければ難しい

家族信託を利用する場合、信頼できる家族の中に、不動産の管理や処分を適切に行う能力のある人がいるかどうか がポイントとなります。

信頼でき、かつ能力の高い家族がいれば安心して受託者に選ぶことができますが、そのような人がいなければ自分の不動産を安心して託すことは難しくなります。

信託法では、受託者となれるのは家族に限定されているわけではありませんが、将来相続が発生した際のトラブルを避けるためにも、できれば身近な家族の中から受託者を選んだ方が良いでしょう。

適任者がいない場合、代理行為に制限のある任意後見人を選ぶなどの方法で対策を考える必要があります。

また他の家族が受託者の能力や人間性などに不満を持っている場合、親族間トラブルの原因になる可能性もあります。

このような場合は、受託者を監督する「信託監督人 」を設置することでトラブルを回避する方法もあります。

この記事では「家族信託の重要人物〜信託監督人〜」と題して、家族信託における「信託監督人」についてお伝え致します。家族信託では委託者は資産の管理・運用を受託者に依頼しますが、さまざまな理由から、受託者の財産管理に不安があるケースもあると思います。その場合に活用できる信託監督人について、この記事でご紹介します。
信託監督人とは?〜家族信託を監視・監督する重要な役割〜

2. 関係者は長期間にわたり拘束される

家族信託契約は、契約してからが始まりであり、場合によっては長期間にわたり続いていきます。

その期間、受託者である子は信託契約の内容に拘束されることになるのです。

毎年、受益者である親に向けて信託された財産の収支を報告し、報告書類を保管する手間も発生します。

3. 直接の節税効果があるわけではない

所有資産を信託財産の対象にしても、直接の節税効果があるわけではありません。資産としての評価に変化はないからです。
したがって、相続税対策のためだけの家族信託の利用はおすすめできません。

それでも家族信託を契約していれば財産管理上のリスクを減らす ことができます。

信託登記の登録免許税など一定のコストはかかりますが、資産としての継承がスムーズに行われる、認知症になっても自由に管理・処分できるなど、結果的に相続におけるメリットが発生します。

4. 委託者が意図しない処分行為がされてしまう場合もある

家族信託を利用して、不動産の売却などの処分行為についての権限を受託者に与えた場合、受託者は個人の判断で不動産の売却等ができます。

委託者が想定していたのとは違うタイミングで不動産を売却されてしまう可能性もあるため、注意が必要です。

受託者は自分一人の判断で不動産を売却できるため、委託者の意図と異なる処分をする可能性がありますが、その判断は信託契約に定めた目的に沿った内容である必要があります。

信託した財産管理のためにも、信託の目的や受託者の権限の範囲について、契約内容をしっかりと作り込んでおくことも重要なポイントとなります。

5. 信託登記などの手間がかかる

不動産を信託財産とした場合、その不動産が信託財産であることを公にするため信託登記を行う必要があります。

自分で手続きをすることも可能ではあるものの、信託登記は通常の移転登記等とは異なる難しさがあるため信託の登記は通常、司法書士に依頼をして行います。

その際には、司法書士に支払う報酬が発生します。

6. 家族信託に強い専門家が多くはない

家族信託契約は、契約してからが始まりであり、数年〜長期間に渡って効力が発生します。

家族信託の契約書作成だけを経験した専門家は増えてきていますが、契約後の対応や信託の終了までを一貫しての経験がありフォローが可能な専門家はまだ少ないのが現状です。

数多くの専門家が家族信託の契約書作成のみを行い、その後のフォローを対応しない(できない)ことも明らかになっています。

目の前の専門家が本当に家族信託に詳しい専門家であるか、契約後のフォローも十分に経験しているかどうか、ご自身で見極めていく必要があります。

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家族信託された不動産は売却可能か?

家族信託による不動産の売却が可能かどうかは、信託契約書の内容により異なります。

条項に信託した不動産の「売買」に関する記載があるかどうかです。

それぞれの場合について確認していきましょう。

契約の条項に信託不動産の「売買」に関する記載がある場合

信託契約書に「不動産の処分」に関する権限の項目が記載されており、不動産登記にも記載内容の反映がされていることが確認できれば、受託者である子が親に代わり不動産を売却することができます。

売却に伴う、土地の境界確定の手続きなども親に代わって行うことができます。

契約の条項に信託不動産の「売買」に関する記載がない場合

信託契約書に「不動産の処分」に関する権限の項目が記載されていなかった場合は、原則として家族信託された不動産を売却することはできません。

「売買」に関する記載がない場合に売却をするためには

  1. 信託契約書の内容に「売買による不動産の処分」権限を追加する契約内容の変更を行う(信託契約で定めた合意などが必要です)
  2. 委託者と受託者間で合意解除をして信託を終了させ、委託者自らが売却を行う

という方法をとる必要があります。

しかし、契約内容を変更するには受託者である子だけでなく、委託者兼受益者である親の関与も必要です。

この時、親の認知症が悪化していて意思能力がないとされる場合には、契約変更や合意解除などはすることができなくなり、信託終了事由が発生するまでは売買をすることが出来ない状態となります。

そのため、もしも受託者である子に与える権限に制限を設ける場合は、契約書を作成する段階で専門家としっかりと調整し決めていく必要があるのです。

不動産に抵当権がついている場合

不動産を家族信託する際に、特に注意する点があります。
それは不動産に抵当権 がついている場合です。

不動産を売却するためには抵当権を外してもらい、買主に引き渡す必要があります。

具体的には、

  1. 融資銀行へのローンの返済手続き
  2. 返済に伴い抵当権を外す手続き

の2段階に分けて進めることになります。

2.の手続きについては受託者である子によって行うことができますが、
1.の融資銀行への返済の手続きについては債務者が行う必要があるため、債務者が誰かの確認をしておく必要があります。

債務者が親であった場合、認知症が悪化していると繰り上げ返済の申込みができず、不動産売却に支障がでてしまう可能性があります。

家族信託した不動産を売却するには?

家族信託した不動産を売却するには2つの方法があります。

  1. 不動産自体を売却する
  2. 受益権を売却する

それぞれ当事者と法律効果が異なるため、委託者兼受益者を父親、受託者を子としたケースで解説をします。

不動産自体を売却する

不動産自体を売却する場合、売主は「受託者である子 」です。

子は不動産を処分した対価として売却代金を得て、受益権(財産権)を持つ親のために介護費や生活費・医療費として使うことが可能です。

受益権を売却する

受益権(不動産にかかる財産権)を売却する場合、売主は「受益者である父親 」です。

父親は受益権(財産権)の対価として不動産の売買代金に相当する金銭を得ます。

この時、受託者である子が引き続き管理し、信託不動産から得た収益を財産権(受益権)の買主に渡していくのです。

父親の認知症対策が目的である家族信託では、2つ目の方法はあまり使われません。

ほとんどが1つ目の「不動産自体を売却」する方法です。
2つ目は大家業などのビジネスを目的として利用する場合に使われます。

不動産を家族信託する際の税金

家族信託で不動産を信託財産とする場合、どのような税金がかかるのでしょうか。

ここでは、受益者・受託者の順に、課税される可能性のある税金について記載します。

【受益者】課税される可能性のある税金

受益者に課税される可能性のある税金として以下の4種類があります。
「委託者=受益者」の場合は、委託者は受益者として税金がかかることになります。

課税の可能性は事例により異なりますので、参考としてご覧ください。

1. 贈与税

受益者と委託者が同一人である場合には、基本的には贈与税はかかりません。

しかし受益者と委託者が別の人の場合には、委託者から受益者への贈与があったとみなされ、贈与税が課税される可能性があります。

また、受益者と委託者が同一人である場合でも、ケースによっては贈与税が課税される場合があります。

そのため実際に家族信託を行うときは、税務上の問題がないか詳しい専門家に確認しておきましょう。

2. 相続税

信託契約の際、多くの場合、委託者兼受益者が死亡したときの受益者の地位を相続する相続人を決めておきます。

相続が発生すると、受益者の地位を引き継ぐ新たな受益者に対して相続税がかかります。

この記事では、家族信託をすることで相続の対策(相続税対策)ができるのか、家族信託と税金の関係について解説します。また、相続対策としての家族信託の実際の活用事例や、その際支払う税金についても、わかりやすくご紹介します。
【家族信託と相続税対策】家族信託をすると節税できるって本当?

3. 譲渡所得税

信託受益権(信託財産から利益を受ける受益者の権利)は売買することが可能です。
(信託契約の中で受益権の売買を制限することも可能です。)

受益者が信託受益権を売却した場合、売却したことにより発生した利益に対して受益者に譲渡所得税がかかります。

4. 所得税・住民税

信託財産の不動産を賃貸している場合、賃貸収入が不動産所得となり、それに対する所得税・住民税が受益者にかかります。

【受託者】課税される税金

次に、受託者に課税される税金についてご紹介します。

信託財産に不動産が含まれる場合において、

  1. 登録免許税
  2. 固定資産税

以上の2つが、受託者が支払うべき税金となります。

1. 登録免許税

信託財産に不動産が含まれている場合、その不動産について信託による所有権移転及び信託の登記を行う必要が生じます。

不動産を取得した場合にかかる「不動産取得税」については、受託者が実質的な所有権を取得したわけではないため、不動産取得税についてはかかりません。

ただし、信託の登記については受託者に登録免許税がかかります。

また、信託を終了する場合にも、信託不動産を受託者から引き継ぐ人への所有権移転登記が必要となり、登録免許税がかかります。
(通常、この登録免許税は不動産を引き継ぐ人が負担します)

なお、信託の終了などで委託者兼受益者に所有権を「戻す」場合には、登録免許税はかかりません。

2. 固定資産税

不動産を所有している人には毎年固定資産税が課税されます。

信託財産に不動産が含まれる場合、形式的であっても受託者が所有者となるため、受託者に対し固定資産税がかかります。

この固定資産税は受託者が個人で負担するのではなく、信託によって預かっている金銭の中から固定資産税を支払うことができます。

【委託者】基本的に課税されない

家族信託は、不動産などの所有権を「財産権」と「名義」とのふたつに分けます。

「名義」のみ受託者(子)に変えておくことで、不動産の管理・処分などの権限だけを先に渡すことができる仕組みです。

「名義」は変えるが、「財産権」は所有者である委託者(親)に残ることで、贈与税や不動産取得税などを課税されることなく利用できるということなのです。

信託不動産の損益通算について

損益通算」とは、黒字の所得から赤字の所得を差し引くこと です。

家族信託した不動産、つまり「信託不動産」については

  • 信託不動産の黒字部分は、他の財産と損益通算できる
  • 信託不動産の赤字部分は、他の財産と損益通算できない

信託不動産の赤字部分は無かったものとして扱われます。
したがって、家族信託をすることで赤字部分を損益通算できず税金負担が増える場合があるのです。

1つの家族信託の契約で、2つの不動産を信託している場合、その2つは損益通算ができます。
同じ家族信託契約の中であれば損益通算できる ということです。

赤字の不動産がある場合、他の黒字の不動産と一緒に組むべきかなど、家族信託の設計の際にはよく確認・検討する必要があるでしょう。

家族信託契約の具体的な手続きとは

このように活用度の高い家族信託ですが、実際に活用する場合にはどのような手続きが必要なのでしょうか。

家族信託契約の具体的な手続きの流れは以下のとおりとなります。

  1. 契約前の話し合い
  2. 公証役場での信託契約書の作成手続き
  3. 信託した不動産名義の変更登記
  4. 信託口口座の開設
  5. 受託者による管理の開始

ここからは具体的内容について解説していきます。

1. 契約前の話し合い

信託契約の前に、委託者と受託者で信託の内容を決定していきます。

信託の目的・財産・内容について十分に話し合い、可能であれば将来の相続人などの親族に対して信託を始めることや、その内容について伝えておくことが理想的です。

後々、委託者が亡くなった後に相続トラブルが発生することを防ぐためです。

また財産のうち、何を信託財産として託すのかは慎重に決めましょう。

信託できるのは預貯金や不動産、株式などの有価証券・絵画などです。

さらに受託者の権限についても重要な契約条項となります。

たとえば信託財産が不動産の場合、
・不動産管理の権限のみとするのか
・売却などの処分の権限も与えるのか
・受託者の権限の範囲
などについても慎重に決めておく必要があります。

2. 公証役場での信託契約書の作成手続き

公証役場で信託契約書を公正証書で作成します。

法的には公正証書化は求められていませんが、公正証書にする方が後のトラブルの予防となるため、実務上は公正証書を作成します。

公正証書作成には当事者の本人確認とともに作成する文書の内容確認が行われます。

公正証書作成段階で委託者本人に意思・判断能力があったことを公的に証明する手段にもなるのです。

公正証書化は重要な手続きです。

3. 信託した不動産の名義変更登記

信託財産である不動産については、受託者への所有権移転登記及び信託の登記を行います。

信託登記では目録作成などの手続きもあるため、一般的には司法書士に依頼します。

4. 信託口口座の開設

信託財産を預かるため、受託者名義の銀行口座を開設して委託者の金銭を管理します。

信託口口座の作成方法や「信託口」が作成できないときの対応方法について、こちらの記事で詳しく解説していますので参考にしてみてください。

家族信託を利用する場合、信託法で受託者は「分別管理義務」を負い、信託された財産と個人の財産とを分別して管理しなければならないとされています。この記事では信託口口座の特徴や口座の開設方法などについてご紹介しますので参考にして下さい。
家族信託の口座(信託口口座)のつくり方について解説

5. 受託者による管理の開始

受託者が不動産や預貯金についての管理を開始します。

尚、不動産ごとに契約をしている火災保険の解約、収益不動産の場合にはさらに賃料振込口座の変更手続きに関する手配などが必要となります。

信託する不動産の状況によって上記以外にも手続きが必要な場合がありますので、それぞれの専門家に相談をして確認をしましょう。

信託不動産の売却手続き時に受託者が不動産業者へ行うべき3つのポイント

信託不動産の売却手続き時に受託者が不動産業者へ行うべきポイントは、主に以下の3つとなります。

  1. 自分が売却権限のある「受託者」である旨を説明する
  2. 通常の不動産売買の場合と同じ売却手続きを受託者が行う
  3. 受託者が行う記名には「受託者○○」と記載する

ここからは詳しく解説していきます。

1. 自分が売却権限のある「受託者」である旨を説明する

家族信託はまだまだ普及し始めたばかりの制度であるため、不動産業者の中には家族信託制度の詳細や手続きについて慣れていない人も多いのが現実です。

そのため、時には不動産業者より
「不動産の名義を元の所有者(委託者)に戻して下さい」
と言われることもあるかもしれません。

そのため、不動産業者に売却の相談をする際には、次のことを伝えるようにしましょう。

  • 自分が委託者から不動産の信託を受けていること
  • 不動産を売却する権限があること

また、相談をする際に売却予定の不動産の登記簿謄本を持参するのも効果的です。

信託をした不動産の登記簿謄本には「信託目録」という事項が記載されており、その部分に信託契約の詳細などが記載されているため、契約内容を説明する手間を省くことができます。

2. 通常の不動産売買の場合と同じ売却手続きを受託者が行う

信託不動産を売却する場合でも、売却の手続き自体は通常の不動産を売却する場合と同様です。

具体的な不動産売却手続きの流れは次の章で解説しますが、不動産の信託をした場合には、この一連の手続きは全て受託者が行うことができます。

3. 受託者が行う記名には「受託者○○」と記載する

不動産を売却する際には、売買契約書をはじめ多くの書類に記名が必要となります。

その際のポイントとして、売却に関する書類には「受託者○○」と記名するようにしましょう。

例)受託者の名前が信託太郎の場合には、「受託者 信託太郎」という形になります。

単に受託者の名前だけを記載してしまうと、信託契約上の行為をしているのか、受託者個人としての行為なのかが不明確になってしまいます。

信託の受託者として手続きを行っていることを明確にするためにも、関係書類には「受託者○○」という記名が適しています。

家族信託された不動産を売却する手順

家族信託をされた不動産売却はどの様な手順で行われるのでしょうか?

売却をする手順の流れは以下のとおりです。

  1. 不動産仲介会社に売却の依頼をする
  2. 買主が見つかったら売買契約を締結する
  3. 買主へ不動産を引渡し、所有権移転登記を行う
  4. 売却代金を財産管理用の信託口口座へ入金する
  5. 信託抹消の登記手続きを行う

ここからは具体的な内容について解説していきます。

1. 不動産仲介会社に売却の依頼をする

不動産仲介会社に売却の依頼をして媒介契約を行います。

自分で売却先を探すと多大な時間と労力を費やしますので、プロに任せましょう。

2. 買主と売買契約を締結する

買い手が見つかったら売買契約を締結します。

家族内でのトラブル防止のために、事前に委託者や家族へ契約を締結する旨を伝えておきましょう。

3. 買主へ不動産を引渡し売却代金の受領、所有権移転登記を行う

買主へ不動産を引き渡すと同時に売却代金を受け取り、司法書士へ所有権移転登記を依頼します。

4. 信託抹消の登記手続きを行う

所有権移転登記と同時に信託の抹消登記も司法書士に依頼をします。

5. 売却代金は財産管理用の信託口口座へ入金する

不動産の引渡しで受領した売却代金は財産管理用の信託口口座へ入金します。

相続対策として家族信託を活用することができるケース

直接的な相続税対策はできない家族信託ですが、活用することで相続に向けての準備やサポートをすることは可能です。

家族信託を相続対策に活用することができるケースを2つ紹介しますので参考にしてみてください。

  1. 相続税の節税のために資産運用をしたい場合
  2. 先祖代々の資産を血のつながった孫へ引き継がせたい場合

1. 相続税の節税のために資産運用をしたい場合

たとえば高齢の親が多額の預貯金を保有している場合、そのまま相続が発生すると多額の相続税がかかります。

この場合の相続対策としては、預貯金を使ってアパートを建て、財産の評価を下げる手法等があります。
建築費や購入費のため、資産全体の評価額が下がるからです。

しかし高齢者にとっては、自分で不動産の購入や建築などの複雑な手続きをすることはハードルが高く、躊躇してしまうケースも多いでしょう。

このような場合には、家族信託を契約することで、複雑な手続きへの対応なども含め、相続税対策のための資産運用を家族に託すことができます。

間接的ではありますが、相続に向けた準備を進めることができるのです。

2. 先祖代々の資産を血のつながった孫へ引き継がせたい場合

先祖代々の土地や資産を所有している場合、自分と血のつながった子孫に引き継がせたいと思っていても、相続発生により他の相続人へと分割されてしまう恐れがあります。

何もしなければ血のつながらない長男の妻の家系に引き継がれる可能性があるため、遺言で指定したいところです。

しかし、法定相続の配分を崩してしまうと、日ごろは仲の良い一族であってもそれが禍根となる可能性もあります。

そこで、家族信託を利用して引き継ぎ先を指定する方法があります。

自分が亡くなった後の受益者は長男を指定し、さらに長男が亡くなった場合の受益者を血のつながった孫に指定することで、長男にも配慮した形で直系の親族に資産を引き継ぐことができるようになるのです。

注意点を押さえた上で不動産における家族信託の活用を

不動産を家族信託財産とする場合、自分で不動産の管理ができなくなった時の不安を軽減することができるなど、様々なメリットが考えられます。

親が高齢で、かつ将来空き家になる可能性のある自宅、投資用の不動産、先祖代々の土地を持っている場合 などは、相続のことを想定して家族信託を検討すべきだと言えます。

一方、家族信託には設計次第によっては思わぬ落とし穴もあります。

家族信託には登記も必要となるため、家族信託事例に関して経験豊富な司法書士などの専門家に相談をしながら、万全の対策をとっておくことをおすすめします。

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