家族信託において、委託者は資産の保有者ですので確定していますが、受託者については誰が就くと良いのか兄弟間で議論になることもあるかもしれません。

適任者がいても仕事で多忙であったり、遠方に居住しているから不都合がある、責任の重い役目を1人で引き受けたくない等、事情は様々でしょう。

そこで、受託者を複数名にすることは可能なのでしょうか?

結論から言えば、可能です。

例えば、長男と次男の2人を受託者とすることができます。信託法上、受託者の人数に制限はないためです。

では、受託者を複数にする場合、何かデメリットはあるのでしょうか?今回は受託者を複数人にするメリット面とともに注意点について解説します。

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受託者は負担が大きい?

受託者は委託者から信託契約で頼まれた資産の管理運用を行います。

信託契約である以上、家族信託の受託者には「善管注意義務」「忠実義務」「公平義務」「分別管理義務」など、信託法上の様々な義務が課せられます。

預かった信託財産や信託についての事務に注意を払いつつ、信託の目的に沿って誠実に財産を管理する義務となります。

(受託者の義務や仕事については『家族信託したら、面倒な報告をしなければいけない?』をご参照ください。)

信託事務については適している第三者に委託することも可能ですが、それでも受託者は主体となって義務を負担する立場です。大変だと思う向きもあるでしょう。

負担が大きい場合は受託者を2人以上で契約するのも方法の1つです。

受託者を複数人にするメリット

受託者を複数にする際の具体的なメリットとして、信託事務の負担を分散できる点があります。

【受託者が複数人になるメリット】

  • 負担の分散
  • 受託者がお互いに監督することも可能
  • 判断に迷ったときに受託者同士で相談できる

信託財産については管理がおろそかになったり、私的利用も起こる可能性があります。受託者が複数人であればそのような問題を防止するストッパーにもなります。

また、信託財産の運用について判断に迷ったとき、受託者同士が相談し合うことで、一人に過度な負担がかかることがなく信託事務を遂行することができます。

信託法が複数人の受託者を許容しているのは、上記のようなメリットがあるからです。

受託者が複数である場合には、信託事務の処理にあたって各々の受託者が意思決定に関与することによって慎重かつ合理的な意思決定がされることが期待されています。

受託者を複数人にした際のデメリット

受託者を複数にした場合、上記のようなメリットの一方でデメリットもあります。

(1)迅速な意思決定が進まないケース

原則として信託事務の処理は「受託者の過半数」で決するとされています。

信託契約で受託者の意思決定について別段の定めや事務の分掌に関する定めを設けることは可能ですが、複数の受託者の意見が合わず、予定通りの信託ができなくなることも考えられます。

(2)信託内で決定した債務は受託者間の連帯債務に

受託者が信託事務を処理する際に各受託者が第三者に対し負担した債務は連帯債務になります。

それほど一般的に生じる内容ではないかもしれませんが、信託財産(不動産)を担保に入れて信託内での借入をした場合などが当てはまります。

信託上の業務であるため、本当は自分が個人で借りた債務ではありません。しかし、信託業務の担当の1人であるため、その債務を共同で追うことになります。

もし債権者から債務の弁済を求められた場合には、受託者として全員が連帯して負担することになります。

そのため、受託者が複数の場合には相互の意思疎通や連携が求められますし、受託者としての責任感や判断の重さを自覚した上で資産運用の判断をする必要があります。

受託者を複数人にせず信託組成を工夫する方法

上記のとおり、受託者を複数にすることは可能ですが、信託財産の内容によってはデメリットも大きくなります。

仮に大きな財産を信託の対象としており、その運用に重要な意思決定や迅速な行動が求められる場合には、受託者を複数人とする場合にデメリットの方をしっかりと検討しておかなくてはなりません。

そのため、受託者の負担を分散したいというご意向をお伺いした際には、他の方法もご紹介することがあります。

受託者を複数人とせず、信託の組成を工夫する方法です。

[1]複数人ではなく「第二受託者」を設定する

受託者を複数にするのではなく、例えば『第一受託者』である長男が、なんらかの理由で受託者として信託事務の遂行ができなくなった場合に、次男を『第二受託者』として予備的に定めることもできます。

基本的に第一受託者が実質的な受託者であり、もしもの時に備える方法であるため対等な地位ではありませんが、兄弟ともに信託に関わる予定として設計することで負担を分散できます。

[2]監督役として「信託監督人」「受益者代理人」を設定する

本来は受託者の監督役になりますが、「信託監督人」や「受益者代理人」などに兄弟を設定する方法もあります。

例えば、受託者には次男が就任し、長男を信託監督人や受益者代理人などに選任して、次男の信託事務を監督するという方法です。

本来は受託者の監督役である「信託監督人」「受益者代理人」は信託契約で設定することで就任することができます。

信託監督人は、受託者の財産管理方法などを監視監督する役割であり、受益者代理人はもともと受益者が有している管理者的な役割(信託契約の変更や受託者の解任等)を代理します。

受益者代理人は受益者の意思能力の低下に備える役目ですが、これらの役職に兄弟が就くことで、受託者の管理だけでなく相談役として協力することが可能となります。

[3]信託契約そのものを複数作成する

1人の委託者が複数の信託契約を締結することも可能です。兄弟ごとに信託で管理する財産を分け、複数の家族信託契約を締結するという方法になります。

例えば、委託者が信託したい財産として、不動産A、不動産B、現金5000万円があったとします。

長男と次男に信託を依頼し、長男には不動産Aと現金2500万円の信託契約を、次男とは不動産Bと現金2500万円の信託契約を締結する方法です。

このように分割することで受託者を複数にすることなく、公平に分担してもらうことが可能となります。

また、このような信託組成でも、受託者はお互いに監督役に付くことができます。各受託者にお互いの信託監督人に就いてもらうこともできるのです。

まとめ

以上のとおり、受託者の負担が気になる場合は、メリット・デメリットを踏まえて、各事情や受託者間の関係性を踏まえた検討をお勧めします。

受託者を複数にする方がシンプルのように感じますが、大型の資産を有している場合については、受託者が複数人になったときのデメリットを押さえて信託組成を工夫していきましょう。

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