家族信託中に委託者が亡くなった場合、どのような手続きが必要になるのでしょうか。

例えば、父の認知症対策のために家族信託をしているケース。
息子を受託者・父を委託者兼受益者としていた場合、通常の相続とは異なる手続きになるのでしょうか。

今回は、家族信託中の家族に相続が発生したケースについて解説していきます。
信託契約の内容によって、手続きが異なる点にご注目ください。

要約

  • 委託者が死亡した場合も、家族信託の契約内容によっては相続が開始しない場合がある
  • 相続手続きを進める必要があるかどうか、まずは家族信託の契約内容を確認しましょう
  • 中でも信託財産・信託期間・継承先と、その方法は要チェック
  • 委託者の死亡により受益権や残余財産を取得した場合は、相続税の対象となる
  • 承継や相続の取り決め、相続税の可能性については専門家へ相談を

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家族信託は相続税対策になるか

結論からお伝えすると、家族信託は直接的な相続税対策・節税にはなりません

その理由を詳しく説明していきます。

家族信託は節税にはならない

家族信託をしても、実質は財産を託された本人が信託財産を有する ことから、課税関係は特に変わることがありません。

そのため、家族信託は相続税対策・節税効果を期待するものではない ということを認識しておきましょう。

受託者に信託報酬を支払う定めを信託契約に含めることによって、信託財産を減らすという仕組みをつくり、結果的にいくらかの節税作用を生むこともあります。

しかし基本的には家族信託そのものに節税効果はありません

家族信託では積極的な節税効果を期待することはできず、資産の組み換えなど他の節税対策を併用する必要があることを覚えておくと良いでしょう。

この記事では、家族信託をすることで相続の対策(相続税対策)ができるのか、家族信託と税金の関係について解説します。また、相続対策としての家族信託の実際の活用事例や、その際支払う税金についても、わかりやすくご紹介します。
【家族信託と相続税対策】家族信託をすると節税できるって本当?

家族信託についてさらに詳しく見る場合は、こちらの記事を参照ください:

家族信託は「認知症による資産凍結」を防ぐ法的制度です。認知症が進行し意思能力を喪失したと判断されてしまうと、銀行預金を引き下ろせない、定期預金を解約できない(口座凍結)、自宅を売却できないなどのいわゆる「資産凍結」状態に陥ってしまいます。そのような事態を防ぐために、近年「家族信託」が注目されてきています。この記事では家族信託の仕組みやメリット、デメリットをわかりやすく解説します。
家族信託とは?わかりやすくメリット・デメリットを徹底解説します

家族信託契約中に相続が発生した場合の相続税

家族信託の契約中に、相続が発生した場合の相続税はどうなるのでしょうか。

以下で詳しく説明していきます。

信託財産(受益権)が相続税の対象になる

家族信託であっても、必要な税金は課税されることをお話してきました。

ところが、相続税は財産的価値が他者にうつるタイミングで課税されます。

信託した財産は便宜上、受託者に「所有権」がうつり、受益者は家族信託により「受益権」を有することになります。

受益者が亡くなると、受益権は相続財産として相続税の対象財産 となります。

財産を信託財産とした場合の受益権の評価は、通常の金銭や不動産と同じ評価方法で計算されます。

よって、所有権が信託財産となり受益権となったとしても評価額に変わりはないのです。

なお、受益権の場合であっても家族信託をしない場合の通常の財産と同様、小規模宅地の特例や配偶者控除などを活用することができます。

家族信託で相続税が発生した場合の課税対象者

受益者が亡くなったことにより信託財産(受益権)が他者に承継されると、そのタイミングでこの財産を承継した人物に相続税が課税されます。

受益者が亡くなった場合の財産の引継ぎ方法については、信託契約の定め方によって異なります。

  • (1)受益者の死亡により信託契約を終了させ、帰属権利者に引き継ぐ方法
  • (2)受益者の死亡により信託契約は終了させず、受益権として引き継ぐ方法

(1)受益者の死亡により信託契約を終了させ、帰属権利者に引き継ぐ方法

実務上、最も多く運用されている委託者=受益者となる自益信託において、この「委託者 兼 受益者 死亡」につき信託契約を終了させるのが一般的な家族信託契約 です。

◎受益者の死亡により信託契約の定めで信託契約を終了させる場合:
信託契約に承継者(帰属権利者)の定めがあれば、そのものが信託財産を所有権として取得することになり、その取得した財産が相続税の対象として課税されます。

◎手続上の大きなポイント:
信託財産だけでなく、信託財産以外の受益者個人名義の固有財産(所有権財産)について両方の財産がどれだけあるのかを調べ、財産目録を作成することです。
なぜならば、信託財産も受益者個人名義の所有権財産もいずれも相続税の課税対象になるからです。

(2)受益者の死亡により信託契約は終了させず、受益権として引き継ぐ方法

受益者が死亡しても信託契約を終了させず、継続させるケースを「受益者連続信託 」と言います。

受益者連続信託とは、委託者兼受益者である人物が死亡後に第二受益者、第三受益者…と、後に続く受益者に受益権を引き継いでいく仕組みです。

この場合は、最初の受益者死亡により受益権を新たに取得する「第二受益者」に対して相続税が課税されます。

遺言では一世代までしか、相続財産の承継先を指定することができません。
一方で、受益者連続信託が可能であることは家族信託の大きな特徴の一つと言えるでしょう。

受益者連続信託は永久に継続できるわけではなく、一定の制限がありますが、上手く設計することで希望に近い管理を継続し続ける相続対策が可能です。

たとえば、以下のような場合に有効な仕組みです。
・受益者死亡後に認知症の配偶者のための財産管理を継続したい
・障害がある子のための財産管理をしたいなど

3ヶ月以内に行うべき相続手続きの流れと方法

家族が亡くなった後、3ヶ月以内に行うべき相続の流れとその手続き方法を確認していきましょう。

遺言書の有無の確認

まず、遺言書の有無を確認する必要があります。

遺言書がある場合、法定相続分とは異なる割合での遺産分割や法定相続人以外へ財産を受け継ぐことができます。

万が一、遺産分割協議の完了後に遺言書が見つかると、遺産分割協議のやり直しを行う可能性があり非常に手間がかかるでしょう。

そのため、亡くなった人から事前に遺言書の有無を知らされていなかった場合も、相続手続きを始める際には遺言書を探しておくことが非常に重要だと言えます。

遺言書の種類の確認

遺言書が見つかったら、その遺言書の種類を確認しましょう。

主な遺言書の種類は以下3種類です。

  • 自筆証書遺言
  • 秘密証書遺言
  • 公正証書遺言

遺言書が公正証書以外である場合

遺言書が公正証書以外であった場合、相続人であっても勝手に開封できないため注意が必要です。
勝手に遺言書を開封することは違法行為であるため、過料が課せられる恐れがある のです。

家庭裁判所での検認手続きの流れは以下の通りです。

  • 家庭裁判所に検認の申立てを行う
  • 相続人全員に検認期日が通知される
  • 検認期日に相続人が立会いのもと遺言書を開封する
  • 検認済証明書の申請・交付を行う

相続人の調査

遺言書が見つからず遺産分割協議を行う際は、相続人の調査を行い、抜け漏れのないよう洗い出しておく必要があります。

遺産分割協議の完了後に協議に参加していない相続人がいることが判明すると、遺産分割協議は無効となり、やり直しを行う必要が生じるからです。

相続人の調査は、戸籍謄本などの書類を収集して行います。
収集した戸籍謄本は、金融機関の名義変更手続きにおいても使用することが可能です。

相続人の調査および戸籍謄本の収集を行うときのポイントは、主に以下の通りです。

(1)個人の死亡時から遡り、出生までの戸籍謄本を取得する
(2)相続関係を特定するための戸籍を収集する
(3)遺言書がある場合、必要な戸籍の種類が少なくて済む
(4)戸籍の見方・読み方を把握しておく

(1)故人の死亡時から遡り、出生までの戸籍謄本を取得する

故人の戸籍謄本は死亡時点だけでなく、出生から死亡までの連続した戸籍謄本が必要です。
相続人が知らない隠し子や婚姻歴がないかなどをしっかりと調査し、法定相続人にあたる人物を特定するためです。

戸籍謄本は法改正や結婚・転籍などにより、3〜8通程度ある人が多いと言われています。

死亡時点から遡って、戸籍謄本を取得しましょう。

(2)相続関係を特定するための戸籍を収集する

故人の戸籍謄本の収集が完了したら、法定相続人の特定を行うための戸籍収集を行います。

法定相続人は、優先順位が以下のように定められています。

例えば故人に配偶者と子がいる場合、配偶者と子が「法定相続人」となり、故人の親や祖父母は法定相続人にはなりません

法定相続人が確定したら、次は相続人全員の戸籍収集を行います。

このように相続人の戸籍収集が必要な理由は、相続開始時に相続人が生存していたことを証明するためです。

(3)遺言書がある場合、必要な戸籍の種類が少なくて済む

遺言書がある場合は、遺言により相続させる人が決まっていることから、戸籍収集を行い全ての法定相続人を特定させる必要はありません。

そのため、故人が遺言書を遺していた場合は以下の戸籍のみで相続手続きが事足りるのです。

  • 亡くなった人の死亡の記載がある戸籍謄本
  • 相続人(もしくは受遺者)の戸籍謄本

ただし、遺言書の検認手続きを行う際は故人の出生から死亡までの連続した戸籍・相続人全員の戸籍が必要です。

(4)戸籍の見方・読み方を把握しておく

故人の連続した戸籍謄本を収集する際は、取得した戸籍に記載の情報を読み取る必要があります。

戸籍謄本を読み取る際のポイントは、主に以下の通りです。

戸籍は親と子で構成されており、以下の情報が記載されています。

  • 本籍地
  • 氏名
  • 生年月日
  • 身分事項(出生、死亡、婚姻など)

戸籍に記載の改製理由や前の本籍地などを確認すれば、戸籍を遡って取得が可能です。

戸籍謄本の取得方法や必要書類は、以下の通りです。

取得できる窓口 本籍がある(あった)市区町村役場 ※郵送可
取得できる人 * 本人
* 配偶者
* 直系血族
* 代理人
手数料の目安 * 戸籍謄本1通:450円
* 除籍謄本や改製原戸籍謄本1通:750円
必要なもの * 申請書(窓口または各役所のHPよりダウンロード可)
* 本人確認書類
* 代理の場合は委任状
* 郵送の場合は定額小為替など

なお、戸籍謄本の取得方法は各市区町村のホームページで確認できます。
実際に請求先の市区町村ホームページを確認しておくと安心です。

相続財産の調査

相続人が確定し、戸籍謄本の収集が完了したら、次は相続財産の調査を行いましょう。

相続財産の調査を済ませておかないと、多額の借金まで相続してしまったり、何度も遺産分割協議をやり直す手間がかかるといった可能性もあるからです。

相続財産の調査の流れは、以下の通りです。

(1)相続財産の種類を把握する
(2)相続財産の資料を探す
(3)相続財産の種類に合った調査を進める

(1)相続財産の種類を把握する

相続財産は、現金や預貯金などプラスの相続財産 と、借金などのマイナスの相続財産 に分けられます。

それぞれの、以下の通り挙げられます。

【プラスの相続財産】

  • 現金、預貯金などの現物財産
  • 不動産
  • 借地権など不動産上の権利
  • 自動車、貴金属などの動産
  • 株式、国債などの有価証券
  • その他証券
  • 著作権などの知的財産権
  • 故人が受取人の生命保険金

【マイナスの相続財産】

  • 借金、ローンなどの負債
  • 連帯保証などの保証債務
  • 損害賠償債務
  • 未納の税金などの公租公課
  • 買掛金
  • その他、未払債務

※以下の財産は、相続財産には含まれません。

  • 墓地・仏壇・遺骨などの祭祀財産
  • 香典や葬儀費用、埋葬料
  • 故人以外が受取人の生命保険金

(2)相続財産の資料を探す

次に、相続財産の資料や手がかりを探していきましょう。
故人の自宅や貸金庫などを中心に、大切なものを保管していそうな場所を探していきます。

主に以下のような資料が、相続財産の手掛かりとなります。

  • 預金通帳やキャッシュカード
  • 銀行や証券会社等からの郵便物
  • 不動産の権利証、登記簿謄本
  • 不動産の売買契約書
  • 不動産の納税通知書
  • 借用書、請求書
  • 確定申告書の控え

預金通帳は残高の把握だけではなく、過去の入出金記録から他の相続財産を把握するのにも役立ちます。
過去の取引明細も必ず確認していきましょう。

(3)相続財産の種類に合った調査を進める

故人が所有していた相続財産の種類を把握できたら、具体的な財産の評価に移ります。

財産の種類に合った調査方法を選択することで
どんな財産をどれほど所有していたかを把握でき、スムーズでしょう。

財産ごとの相続財産の調査方法は、以下の通りです。

  • 不動産:登記事項証明書・名寄帳を取得する
  • 預貯金や有価証券:口座を開設していそうな金融機関に問い合わせ、相続発生の事実を伝える
  • その他の相続財産:生命保険会社などに問い合わせ、名義変更・解約手続きなどの確認をする

4ヶ月以内に行うべき相続手続きの流れと方法

家族が亡くなった後、4ヶ月以内に行うべき相続の流れとその手続き方法を確認していきましょう。

所得税の準確定申告

故人が自営業者や不動産所得がある人だった場合、相続人は故人に代わって所得税の申告を行います。
これを準確定申告 と言い、相続開始から4ヶ月以内に行う必要があります。

準確定申告が必要なケースは、主に以下の通りです。

  • 個人で事業を行っていた
  • 不動産を賃貸していた
  • 2ヶ所以上から給料を受け取っていた
  • 給与所得が2,000万円を超えていた
  • 給与、退職金以外の所得があった
  • 多額の医療費の支払いがあった

準確定申告の手続き方法や必要書類は、以下の通りです。

提出先 故人の住所地の所轄税務署
手続きする人 * 相続人
* 包括受遺者
必要なもの * 準確定申告書第1表・第2表・付表
* 源泉徴収票など

10ヶ月以内に行うべき相続手続きの流れと方法

家族が亡くなった後、10ヶ月以内に行うべき相続の流れとその手続き方法を確認していきましょう。

遺産分割協議の開始

遺言書がない場合は、相続人全員で相続財産の分け方を話し合う「遺産分割協議 」を行います。

遺産分割協議に法的な期限はないものの、相続税申告時に遺産分割協議書の提出が必要になることから相続開始より10ヶ月以内に完了させることが理想とされています。

なお遺産分割協議は相続人全員で行うと記載しましたが、全員が1ヶ所に集まって行う必要はありません。

電話・メール・その他オンラインツール活用等の方法で、意見交換をしながら協議を進めることも可能です。

また、以下に該当する相続人がいる場合は家庭裁判所にて代理人を選任し、遺産分割協議を進める必要があります。
認知症になって判断能力を欠く人 成年後見人
行方不明者 不在者財産管理人
未成年者 特別代理人

意見の相違があったり、連絡が取れない等の相続人がいて遺産分割協議が難しい場合は家庭裁判所に遺産分割調停を申立て、裁判所関与のもとで話し合いを進めなければなりません。

遺産分割協議を行う際には、遺産分割の方法に関しても把握しておくとスムーズでしょう。

続いて、代表的な遺産分割方法を紹介していきます。

遺産分割の方法

遺産分割の方法は、主に以下の4種類があります。
| 現物分割 | 相続財産を現物のまま分割 |
| 換価分割 | 相続財産の売却代金を各相続人に分割 |
| 代償分割 | 本来の相続分以上の財産を取得した相続人が他の相続人に代償金を支払う |
| 共有分割 | 遺産分割競技の内容や法定相続分に応じて持ち分を決め相続財産を処分せずにそのまま共有 |

現物分割が1番、簡潔でスムーズな遺産分割方法です。
状況によって難しい場合は、他の遺産分割方法も検討すると良いでしょう。

相続税の申告

相続財産の分割方法が決定したら相続財産の評価額を算出し、相続税の計算をしましょう。

相続税がかかる場合は、10ヶ月以内に相続税の申告・納税を済ませる必要があります。

相続税には基礎控除額 が用意されており、相続財産の合計評価額が基礎控除額に収まる場合は相続税の申告・納付は必要ありません。

相続税の基礎控除額の計算方法

相続税の基礎控除額の計算方法は以下の通りです。

相続税の基礎控除額は「3,000万円+法定相続人の数×600万円」で計算します。

例えば、相続人が2名の場合「3,000万円+2人×600万円=4,200万円」が基礎控除額です。

そのため、相続財産の評価額合計が4,200万円以内の場合は相続税の申告・納付ともに不要です。

相続税の申告手続きの流れ

相続税の申告を行う流れは、以下の通りです。

  • 相続財産の評価額を算出
  • 相続税の総額を計算
  • 申告書の作成・納税

相続税は固定資産税などとは異なり、税務署が税額を計算し納付書を送ってくれるわけではありません。
相続人自らが相続税の計算を行い、税務署に相続税の申告・納税を行う必要があるのです。

また、相続税は基礎控除額の他にも様々な控除や特例が用意されています。
控除や特例を利用できる場合は、基礎控除額の相続財産評価額であっても相続税がかからない可能性もあります。

利用できる控除や特例があるか、相続税を節税できる方法がないかなど、相続に詳しい司法書士・税理士などの専門家に相談すると良いでしょう。

預貯金・有価証券等の名義変更

遺産分割協議書の作成完了後、各相続財産の相続手続きが可能になります。

預貯金・有価証券等の名義変更手続きの流れは、以下の通りです。

  • 金融機関や証券会社に連絡する
  • 残高証明書の開示・照会請求を行う
  • 所定の届出用紙(相続手続依頼書)を入手する
  • 届出用紙・必要書類を提出する
  • 相続人が口座開設を行う ※有価証券等を相続する場合

必要書類の種類や手続きの流れは、各金融機関によって異なる場合もあります。
まずは、故人が利用していた金融機関に連絡をしましょう。

金融機関の名義変更手続きを行うときに必要な書類は、主に以下の通りです。
全てのケースでの必要書類 * 本人確認書類
* 通帳
* キャッシュカード
* 貸金庫の鍵など
遺言書がある場合の必要書類 * 相続届(相続手続依頼書)
* 遺言書
* 相続関係を証明する戸籍謄本等
* 払い戻しを受ける者の印鑑証明書など
遺言書がない場合の必要書類 * 相続届(相続手続依頼書)
* 相続関係を証明する戸籍謄本等
* 相続人全員の印鑑証明書
* 遺産分割協議書など

不動産の名義変更

故人が不動産を所有していた場合、不動産の名義変更手続きが必要です。
この手続きは一般的に「相続登記 」と呼ばれ、法務局に必要書類と登記申請書を提出し、手続きを行います。

なお、相続人が不動産を売却すると決めている場合であっても、まずは故人名義から相続人名義へと変更する必要がある ことを把握しておきましょう。

相続登記の手続き方法・必要書類は以下の通りです。
提出先 不動産の所在地を管轄する法務局
提出できる人 * 不動産を相続する人
* 代理人
費用 不動産固定資産評価額の0.4%(登録免許税)
(目安:1,000万円の場合は4万円、2,000万円の場合8万円)
必要なもの 不動産固定資産評価額の0.4%(登録免許税)
(目安:1,000万円の場合は4万円、2,000万円の場合8万円)
必要なもの * 登記申請書(法務局のHPよりダウンロード可)
* 故人の出生から死亡までの戸籍謄本
* 故人の住民票除票または戸籍附票
* 相続人の戸籍謄本
* 遺産分割協議書
* 印鑑証明書
* 遺言書など

これらの相続登記は、司法書士に代行してもらうことも可能です。
2024年より相続登記を行うことが義務化されるため、必ず行うようにしていきましょう。

その他、各種財産の名義変更

ここまで解説した、預貯金や有価証券・不動産以外の相続財産も名義変更手続きが必要です。
代表的な相続財産の名義変更方法をご紹介します。

自動車の名義変更方法

故人が所有していた自動車の名義変更の方法と、必要書類は以下の通りです。
提出先 管轄する運輸局または自動車検査登録事務所
手続きする人 * 自動車を相続する人
* 代理人
費用 手数料500円
必要なもの * 移転登録申請書
* 自動車税申告書
* 自動車検査証
* 自動車保管場所証明書(車庫証明)
* 手数料納付書
* 戸籍謄本
* 印鑑証明書
* 遺産分割協議書など

バイクの名義変更方法

故人が所有していたバイクを相続する場合はまず廃車手続きを行い、相続人名義での再登録を行います。

バイクの大きさにより、手続き先の窓口が以下の通り異なります。

  • 125cc以下:市区町村役場
  • 126cc以上:運輸局

ゴルフ会員権の名義変更方法

故人が登録していたゴルフ会員権を相続した場合、運営会社へ名義変更の申請が必要です。

相続の際に会員権の売却を希望する場合、名義変更することなく売却できる場合もあるため、まずは運営会社へ確認すると良いでしょう。

ゴルフ会員権の名義変更に必要な手続き・書類は、運営会社により異なります。

電話加入権の名義変更方法

電話加入権とは、電話回線を利用するためにNTTと契約する権利のことです。
電話加入権の名義変更には、承継 という手続きが必要です。

電話加入権は1回線につき1,500円程度の財産価値があると言われています。

相続手続きの手間を回避するため、契約解除を申請し権利を無料で放棄することもできます。

詳しくはNTTのホームページ等でご確認ください。

損害保険の名義変更方法

故人が損害保険に加入していた場合、名義変更して継続または解約するかの検討が必要です。

損害保険の名義変更・解約手続き方法は保険会社によって異なるため、保険会社の担当者に確認しましょう。

また損害保険が積み立て型の場合、名義変更後に受け取れる満期返戻金や、解約後に受け取れる解約返戻金は相続財産として扱われます。

よって、誰が相続するのか相続人全員で決めておく必要があります。

◎損害保険の名義変更・解約手続きの方法
提出先 各保険会社
手続きする人 相続人
必要なもの 各保険会社所定の書類
* 各種(解約)名義変更申請書
* 保険証券
* 故人の戸籍謄本
* 相続人の戸籍謄本
* 相続人の印鑑証明書
* 本人確認書類など

期限が1年以上ある手続き

相続手続きの中には、期限が1年以上あるものもあります。
期限が長い分、焦る必要はないものの手続き漏れがないよう注意が必要です。

相続開始から1~5年の間に行うべき、主な手続きを確認していきましょう。

  • 遺留分侵害額請求
  • 健康保険の埋葬料・葬祭費の請求
  • 生命保険金の請求
  • 遺族年金の請求

1年以内に行うべき相続手続きの流れと方法【遺留分侵害額請求】

家族が亡くなった後、1年以内に行うべき遺留分侵害額請求 の流れとその手続き方法を確認していきましょう。

◎遺留分侵害額請求とは
遺留分を侵害した相続や生前贈与が行われた場合、遺産を多く受け取った人物に対して、遺留分侵害額相当額の金銭を請求する行為です。

配偶者や親・子などの法定相続人には、最低限度の遺産を受け取ることができる遺留分 という権利があります。

例えば、遺言書に「全ての財産を愛人に相続させる」と記載されていた場合でも、配偶者や故人の子は遺留分にあたる金額を愛人に請求することが可能です。

※ただし、遺留分侵害額請求を行えるのは、以下の期間までです。

  • 相続開始と遺留分の侵害を知ってから1年以内
  • 相続開始から10年以内

2年以内に行うべき相続手続きの流れと方法【健康保険の埋葬料・葬祭費の請求】

家族が亡くなった後、2年以内に行うべき健康保険の埋葬料・葬祭費の請求 の流れとその手続き方法を確認していきましょう。

家族が亡くなると、加入していた健康保険組合から埋葬料が支給されます。
また、国民健康保険・後期高齢者医療制度の適用対象者である場合は葬祭費も支給されます。

これらの請求は死亡から2年以内と期限が定められているため、忘れないよう注意しましょう。

手続き方法・必要書類は、以下の通りです。
提出期限 死亡日から2年以内
提出する人 故人の配偶者・親族・同居人など
提出先 * 市区町村の国民健康保険窓口
* 社会保険事務所
必要なもの * 必要書類
* 葬祭費支給申請書
* 国民健康保険証
* 葬儀社の領収書
* 受取先金融機関の通帳
* 印鑑など

3年以内に行うべき相続手続きの流れと方法【生命保険金の請求】

家族が亡くなった後、3年以内に行うべき生命保険金の請求 の流れとその手続き方法を確認していきましょう。

生命保険金は受取人が請求する必要があり、自動で支払われることはありません。
この生命保険金の請求期限は、死亡してから3年以内です。

家族が亡くなると、やるべき手続きが多く忘れてしまいやすいでしょう。
どこの生命保険会社に加入していたかなどを確認し、速やかに保険金の請求を行えるよう準備をしましょう。

手続き方法や必要書類は、以下の通りです。
提出期限 死亡日から3年以内
提出する人 保険証書に記載されている受取人
提出先 契約している保険会社の請求窓口
必要書類 * 死亡保険金請求書
* 保険証券
* 最後の保険料の領収書
* 保険金受取人と故人の戸籍謄本
* 死亡診断書
* 受取人の印鑑証明書など

加入先の生命保険会社によって手続き方法や必要書類が異なる可能性があります。
事前に確認しておくとスムーズでしょう。

5年以内に行うべき相続手続きの流れと方法【遺族年金の請求】

家族が亡くなった後、5年以内に行うべき遺族年金の請求 の流れとその手続き方法を確認していきましょう。

配偶者や未成年者の親が亡くなった場合、遺族年金が遺族に支給されます。

遺族年金も他の支給金と同様、受取人が申請しないと支給されません。

請求期限は、死亡から5年間です。
速やかに申請を行い、給付を開始してもらいましょう。

手続き方法や必要書類は、以下の通りです。
提出期限 死亡日から5年以内
提出する人 故人の配偶者・子など
提出先 住民地の市区町村国民年金窓口
必要書類 * 国民年金遺族基礎年金裁定請求書
* 故人の年金手帳
* 戸籍謄本
* 死亡診断書のコピー
* 源泉徴収票
* 受取先金融機関の通帳
* 印鑑など

相続による財産承継が生じないケースとは?

民法では、相続は死亡によって開始し、相続人は相続開始時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継するとされています(民法882条、896条)。

そのため、委託者兼受益者が亡くなると、何もしなくても相続が開始することになります。

信託財産の承継も、相続により自動的に承継されるものだと思われますが、信託法は民法の特別法とされているため異なる部分があります。

特別法は、信託法が一般ルールである民法に優先して特別ルール として適用されることを意味します。

そのため財産の大部分を信託している場合など、信託財産については信託法のルールにより承継されるため、民法の相続による財産承継がほとんど生じないというケースもあり得るのです。

ただし、すべての財産が信託できるわけではありません。

例えば、信託の対象外である「農地」などについては通常の相続と同じように承継されます。

委託者兼受益者に相続が開始した場合、信託契約の中で注目するポイントを3つ挙げます。

(1)どの財産が信託されているのか信託契約書で確認
(2)委託者死亡により信託が終了する契約かどうか
(3)受益権の承継方法について信託契約に定められているか

以下、1つずつ見ていきましょう。

(1)どの財産が信託されているのか信託契約書で確認

まずは委託者兼受益者の財産のうち、どの財産が信託されているのか という確認を行うことが重要です。

信託されていない財産については当然通常の相続が開始するため、信託していない財産の承継方法について遺言がなければ、遺産分割協議によって決めていくことになります。

信託財産については、信託契約書を確認していきましょう。

また、不動産であれば信託の登記がされているため登記簿を見れば信託財産かどうか分かります。
金銭についても、信託口座が作成されているケースであれば分かります。

(2)委託者死亡により信託が終了する契約かどうか

家族信託では、委託者(兼受益者)が死亡したとしても、即座に信託が終了するわけではありません。

信託を終了させる事由は信託契約で自由に定めておくことができる ため、契約内容に沿った形で終了するかどうかが決まります。

これが民法と大きく異なる点と言えるでしょう。

もし民法と同じように委託者(兼受益者)の死亡により終了すると定めている場合は、信託も終了し、信託財産を清算することになります。

清算手続きを経た後の残余財産について、信託に定めがあるかどうかで行き先が決まります。

◎信託契約で承継人が指定されている場合
その帰属権利者等に承継されることになります。
信託契約に基づいて承継されるため、相続による承継は起こりません。

◎信託契約で承継人の指定されていない場合
信託法に従い、委託者の相続人が帰属権利者として承継します(信託法182条)。

その他、信託していない財産がある場合は、その財産の相続手続きを進めることになります。

(3)受益権の承継方法について信託契約に定められているか

このように信託契約で決められているかどうかによって信託のルールが適用されるか、相続のルールが適用されるかが決まっていきます。

そのため、信託契約の内容が非常に重要である のです。

【受益権を指定しないケース】

ここで「信託を始める段階では、誰に財産を承継させるかまでは決めることができない、あるいは決めたくない」という場合を想定しましょう。

特定の人を指定せず、承継先については民法の相続制度の通り、身分関係にある者に受益権が承継される(遺産分割協議の対象にもなる)というケース です。

このケースに当てはめるには、信託契約で相続を決めていない状態にする必要があります。

委託者の死亡によって信託終了する旨が契約に明記されておらず、かつ受益権を承継する人の定めがない契約です。

一般的な相続手続きとするには、以下のような契約内容にする必要があります。

  • 受益者連続型信託にする
  • 受益権を承継する人の定めを設けない
  • 相続により受益権が承継されることを注意的に明示しておく

このような内容で信託契約を作成しておきます。

受益者連続型信託 とは、複数世代にわたって信託財産を承継する取り決めであり、相続開始後に承継する人を柔軟に決めていくことが可能となる方法です。

相続手続きだけでなく承継についても充分な検討を

信託契約の内容によって、信託契約によるのか、相続のルールによるのか、信託財産の承継を決めることができます。

すでに信託契約を締結してしまったけど「相続を考えたら都合が悪い内容なのでは」と不安がある場合は専門家へご相談ください。

委託者に意思能力があれば、契約を変更できる可能性があります。

このように、信託契約中に相続が発生した場合にも想定した上で契約内容を作成することが非常に重要 だと言えるのです。

様々な場合も想定して信託契約書を作成することができるよう、少しでも早い段階で司法書士などの専門家へ相談しながら進めていくことができると安心でしょう。

家族信託は、認知症になったからといって、すぐにできなくなるというわけではありません。 家族信託に関する理解や、判断能力が確認できれば、認知症発症後でも取り組めるケースがあります。家族信託ができるかどうかの判断基準や認知症の程度について、詳しく解説していきます。
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