証券会社での家族信託の手続きとは?口座開設や注意点についても解説!

2021年02月16日

株式や投資信託などを信託財産にしたいと思っている方も多いのではないでしょうか。

その場合には証券会社での手続きが必要となりますが、どのような手順で手続きをすればよいのか不安に思うかもしれません。

この記事では、上場株式や投資信託などといった金融商品を家族信託する場合の証券会社での手続きや注意点などについて解説します。

1.株式や投資信託を信託財産にできる?信託するメリットは?

そもそも、株式や投資信託を家族信託の信託財産とすることはできるのでしょうか。

家族信託の信託財産には特に制限があるわけではなく、株式や投資信託といった金融商品を信託することは可能です。

株式や投資信託などの金融商品から定期的に収入があれば、老後の生活についても安心できますね。

老後の生活資金のために、株式や金融商品を保有されている方も、一定数いらっしゃると思います。

このような場合、自分が生きている間は、株式や投資信託を保有し続けたいと考えるのが普通です。

しかし、認知症などになってしまった場合、自分で株式や投資信託を管理し、適切なタイミングで売買するなどの判断をすることができなくなってしまいます。

判断能力が衰える前に、株式や投資信託を売却して預金に換えておけば、いざお金が必要になったときにはいいかもしれませんが、配当金が受け取れるなどの金融商品特有のメリットがなくなってしまいます。

金融商品を保有しながら、いざというときにはその処分などもスムーズにできる方法は何か?

この答えが、「家族信託」ですね。

家族信託を使えば、信頼できる家族に株式や投資信託の運用や管理を託しつつ、配当などは自らが受け取ることが可能となります。

こうすることで、自分の判断能力が衰えてからも運用を続けることの不安を解消することができます。

なお、この記事で説明する株式とは、投資目的で保有する上場株式を意味します。自分が経営する会社の非上場株式を家族信託するケースについては、信託の目的や手続きなどが全く異なりますので、その点混同しないようにご注意ください。

2.証券会社で信託口口座を開設する手順

上場株式や投資信託といった金融商品を信託財産にする場合には、証券会社で信託財産を預かるための信託口口座を開設する必要があります。

銀行等の金銭管理をするための信託口口座があっても、それとは別に証券会社でも信託口口座を開設する必要があるということです。

ただし、信託口口座を取り扱っている証券会社限られており、徐々に増えてきてはいるものの、すべての証券会社が対応しているわけではありません。

現状、大手の証券会社では、野村証券、大和証券、楽天証券などで信託口口座を開設することができます。

証券会社で信託口口座を開設する手順は、基本的に以下のようになります。

(1)家族信託契約の内容を前もって証券会社に確認する

証券会社で信託口口座を開設する予定がある場合は、あらかじめ締結する予定の家族信託契約の内容について、証券会社に照会して問題がないかを確認しておきましょう。

それぞれの証券会社では、社内で定める条件を満たした信託契約書があることを条件として口座開設を認めています。

そのため、証券会社に相談せずに公正証書での信託契約書を作成してしまうと、作成した後で契約内容の修正を求められたり、口座開設を断られてしまうなど、無駄な費用や手間がかかってしまう可能性があります。

そのような事態を避けるため、前もって証券会社に契約書の内容を確認しておけば安心です。

(2)信託契約書を公正証書で作成する

家族信託契約自体は、必ず公正証書で契約書を作らなければいけないという決まりがあるわけではありません。自力で作成した私文書であっても契約自体に問題はありません。

ただし、証券口座を開設しようとする場合には、通常は公正証書で作成された信託契約書がなければ口座開設に応じてくれません。

公正証書で信託契約書が作成されていることで、信託契約が法的に問題なく有効であることや、委託者の信託契約の意思が確かであることを担保することができるからです。

証券会社に事前に照会して認められた内容の信託契約書を公証役場で公正証書にしてもらいましょう。

(3)必要な書類をそろえて口座開設の申し込みをする

公正証書の信託契約書ができたら、必要な書類をそろえて委託者及び受託者が証券会社で口座開設の申し込みを行います。

証券会社によって異なりますが、基本的には委託者・受託者の本人確認書類、公正証書による信託契約書は最低でも必要となるので、必要な書類を確認しておきましょう。

信託口口座の開設の要件として、株式や投資信託などを管理する信託口口座のほかに、同じ証券会社の同一支店で、委託者個人の証券口座、受託者個人の証券口座についても別途開設することが求められる場合があります。

無事に信託口口座が開設できたら、他の証券会社に預けている委託者の株式や有価証券のうち、信託財産としたいものを信託口口座に移す手続きを行うことも可能です。(商品によって移せないものもあります。)

3.上場株式や投資信託などを信託する場合の信託契約書の内容

上場株式や投資信託などの金融商品を信託財産にする場合、信託契約書の内容はどのようにすればよいでしょうか。

信託契約書の内容が証券会社で定める要件を満たしていなければ、信託口口座の開設が認められないため、注意が必要です。

(1)委託者と受益者について

家族信託契約では、財産を託す立場である委託者、財産の収益を受け取る立場である受益者を同一人にすることも、別人にすることも可能です。

実際には、ほとんどの場合に初めは委託者イコール受益者という形の契約をします。

証券会社の口座開設にあたっては、委託者と受益者が同一人であることが基本的な要件となっています。

また、委託者兼受益者は、日本国内に住んでいる個人で一人であることが前提となっている場合がほとんどです。

(2)受託者について

信託財産の管理運用を託される立場の受託者は、個人に限らず法人にすることも家族信託契約ではできますが、証券口座を開設する場合には、日本国内に住んでいる個人であることが求められる場合が多いです。

また、受託者は複数人を指定することもできますが、信託口口座を開設する場合には一人だけを指定することが通常は求められます。

さらに、受託者と委託者の関係性、続柄について、受託者が配偶者や子どもなどの一定の範囲内の親族であることを求められることがあります。

甥や姪は3親等の親族となりますが、証券会社の規定によっては2親等内までの親族(親子、配偶者、きょうだい)を受託者とするように定めている場合もあります。

(3)後継受託者について

家族信託は長期にわたることも多く、受託者が委託者より先に亡くなってしまうなどにより受託者としての役割を果たせなくなる可能性があります。

そのため、受託者が任務を果たせなくなるリスクに備えるために、受託者の地位を引き継ぐ人である「後継受託者」をあらかじめ指定しておくことを求められることが多いでしょう。

(4)委託者兼受益者が亡くなった場合について

家族信託の契約では、委託者兼受益者が亡くなった場合でも、受益者の地位を引き継ぐ人を指定して信託を継続することができます。

しかし、証券会社で口座開設をする場合、基本的に受益権が引き継がれる契約にすることは認められない場合がほとんどです。

委託者兼受益者が亡くなった時点で、信託契約は終了するという内容である必要があります。

(5)信託財産について

信託財産の具体的な記載方法については、証券会社に事前に確認しておく必要があります。

個別の銘柄や株式数を記載するのか、どのように財産を特定するのかなど具体的な記載方法をあらかじめ確認しておきましょう。

(6)受託者の権限について

信託契約の中で、受託者の権限として、株式や投資信託等についての投資運用の権限があることを明確にしておく必要があります。

どのような金融商品での運用を認めるのか、リスク性の高い商品での運用を認めるかどうかなどは、事前に当事者間でしっかりと話し合っておきましょう。

(7)信託契約書の作成者について

信託契約書は専門家が作成しなければならないという決まりがあるわけではありませんが、証券会社で口座開設のために提出する信託契約書は、弁護士や司法書士などの専門家が作成したものであることを求められる可能性が高いでしょう。

家族信託の実績があり信頼できる専門家を探して依頼することをお勧めします。

4.株式や投資信託を信託する場合の注意点

株式や投資信託を信託財産にする場合には、どのようなことを注意すればよいでしょうか。

(1)今所有する株式を維持するだけなら成年後見制度の方がよい場合もある

株式や投資信託等の金融商品を家族信託しようとする目的は、自分が認知症などで判断能力を失った場合に備えるためというケースが多いでしょう。

ただし、株式や投資信託等の金融商品を保有しているからと言って、必ずしも家族信託契約が必要とは限りません。

株式等を単に維持することを望む場合には、家族信託をしたとしても、受託者が活躍する場面は考えられません。

そのような場合までも、あえて家族信託契約をする必要性は低いと考えられます。

(2)株式等の管理運用能力のある受託者がいるか

家族信託契約では、財産の管理・運用を託すことができる信頼できる家族がいるかどうかが重要です。

そして、株式等を信託財産にする場合には、受託者が信頼できる人柄であることに加え、資産を管理、運用する能力や金融リテラシーがあるかどうかも慎重に判断する必要があります。

株式等の運用には必ずリスクのある取引も発生するため、これまで運用経験等が全くない場合や、知識が乏しい場合には受託者として適任者であるとは限りません。

そのため、受託者を選ぶときには、慎重に判断する必要があります。

(3)投資信託は移管できない場合がある

証券会社で信託口口座を作った場合、その口座に他の証券会社で預かっている委託者の株式を移す(移管する)ことができます。

ただし、投資信託などの場合には、信託口口座を作った証券会社でも取り扱いをしている商品でなければ移管することができません。

移管したい投資信託などの金融商品については、信託口口座を作る証券会社でも取り扱いがあるのか前もって確認しておきましょう。

5.証券会社を選ぶときのポイント

信託口口座を開設する証券会社を選ぶときは、どのようなことがポイントとなるかをご紹介します。

(1)口座開設の要件をクリアできるか

口座開設を希望する証券会社があっても、その会社の口座開設の要件を満たしていなければ口座開設することはできないため、どのような要件があるかを確認しておく必要があります。

証券会社によっては、最低預入金額を定めており、その金額以上を預けることを条件に信託口口座の開設を認めている場合もあります。

それ以外にも各社で口座開設の要件があるので、自分が要件を満たしているかを事前に確認しておきましょう。

(2)手数料などが妥当な金額か

家族信託に限った話ではありませんが、証券会社で株式の売買など各種の取引をすれば手数料が発生します。

証券会社によって手数料は異なるため、納得のいく料金体系になっているかを確認したうえで証券会社を選ぶとよいでしょう。

(3)自分の希望する取引方法に合っているか

証券会社には、インターネットでの取引のみを行うインターネット証券会社と、担当者との対面取引もすることができる総合証券会社があります。

手数料はインターネット証券の方が低廉な傾向にありますが、担当者が付いて親身に対応してくれることを望むのであれば店舗のある総合証券会社のほうがよいでしょう。

自分がどのような取引形態を望むのかによって、口座開設する証券会社を選びましょう。

(4)信託契約の目的を実現するのに適した商品を取り扱っているか

証券会社によって取り扱っている金融商品の種類やラインナップは異なります。

国内上場株式については、どの証券会社でも取り扱っていますが、投資信託や社債、外国株式などの金融商品については、証券会社によって取り扱いがあるものとないものがあります。

家族信託契約の目的を実現するために適した商品が十分にあるかどうかも確認したうえで証券会社を選ぶとよいでしょう。

6.まとめ

株式などを信託財産にする場合には、証券会社で信託口口座を作る必要があります。

信託口口座を作るためには、証券会社が規定する要件を満たしている必要があるため、事前に相談しておくことが大切です。

信託口口座を開設できる証券会社は徐々に増えています。しっかりと調査をして、自分の要望に合った証券会社を見つけましょう。

 

この記事の監修者

司法書士 梶原隆央(かじわらたかひさ)
神奈川県出身
平成21年司法書士資格取得
トリニティグループの信託部門にて、 実家信託から信託財産数億円に及ぶ信託、 自社株式の信託等、幅広く信託案件に対応。