家族信託は司法書士に依頼すべき?費用や他士業との比較をご紹介

2021年02月16日

この記事をお読みの方はすでにご存じかと思いますが、家族信託は、老後の財産管理や相続対策の新しい手法として今注目を集めています。

家族信託においては、現金や不動産といった財産を他の家族に管理・運用してもらうことになるため、契約の締結や名義変更といった手続きが必要になります。

専門家のサポートを受ければスムーズに手続きを進められますが、誰に相談すれば良いか分からないという方も多いのではないでしょうか。

今回は、家族信託は誰に相談すれば良いのか、様々な士業を比較しつつご紹介します。

家族信託とは

まず、家族信託とはどのような制度なのか簡単に解説します。

「信託」とは、自分が有する現金・預金・不動産といった財産を信頼できる他人に託して管理・運用・処分してもらうことを言います。投資信託のような金融商品も、この信託の一種です。

信託における登場人物は、財産の所有者であり財産を託す人(委託者)・財産の管理・運用・処分を託される人(受託者)・託された財産から経済的利益を受ける人(受益者)の3名です。ただし、実際は委託者と受益者が同一人物であるケースも多いです。

そして、従来の一般的な信託は、受託者が金融機関や法人であることがほとんどでした。

これに対し、家族信託は、家族が受託者となる点に大きな特徴があります。

家族信託では、財産を預けるのが自分の親族なので、信託契約の内容を柔軟に決められます。

この点が魅力となり、注目を集めているのです。

家族信託は司法書士へ依頼するのが一般的

家族信託を行う場合、弁護士、司法書士や行政書士といった法律系士業へ依頼しようと考える方が多いかと思います。

これらの専門家の中でも、家族信託においては司法書士へ依頼するのが一般的です。

というのも、司法書士は日頃から相続登記・成年後見といった家族信託と親和性の高い業務を扱っているため、家族信託を進めるにあたって必要な専門知識を豊富に有しているからです。

また、家族信託によって預ける財産の中に不動産が含まれている場合、当該不動産について法務局での信託登記の手続きが必要です。

司法書士は登記のプロなので、家族信託の登記についてもスムーズに行うことができます。

このように、家族信託は司法書士へ依頼すれば、契約書の作成から登記手続きまでワンストップで完結するため、ほかの士業と比較するとやり取りや全体の費用が少なくて済む可能性が高いのです。

相談する司法書士を選ぶ際の6つのポイント

家族信託は司法書士に相談するのが便宜であると述べてきましたが、司法書士と一口に言っても、それぞれ得意とする分野が異なりますし、能力・経験もバラバラです。

ここでは、家族信託を相談する際の司法書士選びのポイントをご紹介します。

その1 家族信託専門の民間資格を取得している

家族信託の専門家であることを裏付ける民間の専門家資格がいくつか存在します。

これらの資格を保有している専門家は、資格取得の過程で家族信託について学んでおり、また最新の情報についても保有している資格の発行団体からキャッチアップしている可能性が高いです。

家族信託は司法書士に依頼するとワンストップでサポートが受けられると先ほど述べましたが、それはあくまでも家族信託の契約の効力発生までの部分であり、家族信託を開始すると、その後の手続きもかなり煩雑なものが存在します。

これらのアフターフォローについてもサポートを求めるなら、家族信託の何らかの資格を保有した専門家に頼る方が安心でしょう。

司法書士を選ぶ際は、司法書士の資格だけでなく、家族信託専門士の資格も持っているか確認しましょう。

能力・経験・人柄は外から見えづらいですが、「家族信託専門士」の資格の有無は客観的に判断できます。まずはこの点を確認することをお勧めします。

その2 家族信託を取り扱った実績がある

いくら知識があっても、実務として家族信託を取り扱った経験がなければクライアントの細かなニーズに応えることはできません。

司法書士を選ぶ際は、相談しようとする司法書士が家族信託を取り扱った実績がどれくらいあるのか確認するとよいでしょう。

実績を重ねている司法書士であれば、家族信託を相談した時の提案を行き届いたものになることが期待できます。

とはいえ、家族信託が利用されだしたのは平成29年頃からであり、家族信託の歴史はそれほど古くありません。

家族信託を取り扱う専門家は、司法書士以外の弁護士や行政書士も含めて見ても多くいないのが現状です。

そのため、あまりに高望みしすぎると相談できる専門家を見つけられない可能性もあります。

あくまで目安ですが、家族信託の取扱件数が10件以上あれば、実績があると言えるでしょう。

家族信託を相談する司法書士を選ぶ際は、過去に取り扱った家族信託の件数を問い合わせてみるとよいでしょう。

その3 自分の専門領域の外をカバーできるネットワークを持っている

家族信託を行うにあたっては、法律・登記・税金・不動産売買(賃貸)といった幅広い専門知識が必要になります。

現実的に、これらの広範な領域を一人でカバーするのは非常に難しいです。

そのため、家族信託では、複数の専門家が一つのチームとなり連携しながら信託契約の締結やアフターフォローを行うのが一般的です。

司法書士は登記のプロなので、それ以外の領域では弁護士や税理士、公認会計士といった他の士業のサポートがどうしても必要になります。

そうした時に、他の専門家や関連会社と連携できるネットワークを持っている司法書士でないと、スムーズに家族信託を組成できない可能性があります。

時間をかけて家族信託のスキームを組成できたとしても、穴だらけで問題が山積みの家族信託が組成されてしまう可能性も否定できません。

家族信託を組成し、適切なアフターフォローを行うためには他の専門家や関連会社との連携が不可欠なのです。

司法書士に相談する際は、その司法書士は家族信託に詳しい他の専門家や関連会社とのネットワークを有しているか問い合わせてみるとよいでしょう。

その4 アフターフォローを丁寧にしてくれる

家族信託は、信託契約を締結したらそこで終了するものではありません。

その後も継続して財産の運用・管理が行われることとなりますし、法改正・判例変更等による法律面の変化や財産状況、社会情勢の変化に適応するための調整が必要となります。

そうした事後的な調整が必要となった時に丁寧にフォローしてくれる司法書士に相談すれば、安心して相談できます。

アフターフォローの例としては、信託契約の内容の変更や取り扱う財産の内容の変更などが挙げられます。

司法書士に相談する際は、こういったアフターフォローをしてくるのか確認するとよいでしょう。

その5 司法書士が複数在籍している司法書士法人に相談する

司法書士が在籍するのは、個人事務所と司法書士法人の2パターンがあります。

個人事務所は司法書士が一人しかいない場合があるのに対し、司法書士法人は司法書士が複数在籍している点に違いがあります。

家族信託は、信託契約締結当時の受益者が亡くなると相続の手続きをしなければなりません。

つまり、家族信託を開始した後も、いずれ司法書士に仕事をしてもらう必要がでてきます。

相続の際には、信託した財産について登記手続きが必要となるのです。

そうなった時に、相談したのが個人事務所だと、相続の手続きが必要になった時にその司法書士が亡くなっており仕事を依頼できない可能性もあります。

特に家族信託のような数十年にも渡り長期的に存続するケースも多い制度だと、当時の司法書士が既に亡くなってしまっているという事態となる可能性はかなり高くなるでしょう。

そうなると、また別の司法書士をイチから探さなければならなくなり、大変な手間がかかってしまいます。

司法書士法人であれば、司法書士が複数在籍しているため、仮に担当した司法書士が亡くなっていても情報を共有している他の司法書士が対応してくれます。

司法書士法人であれば組織として存続している可能性が個人事務所に比べて高いので、家族信託は司法書士法人への依頼がおすすめです。

また、家族信託は取り扱う領域が広く業務量も膨大な量になります。

司法書士法人であれば、複数の司法書士や事務スタッフが効率的に業務にあたるためスピーディに仕事をしてもらえるでしょう。

おおよその目安としては、司法書士が3人以上在籍している司法書士法人が望ましいです。

その6 自分が信頼できる司法書士に相談するのが一番

ここまで、家族信託を相談する際の司法書士の選び方のポイントを5つ紹介してきました。

しかし、最も重要なのは、自分が本当に信頼できる司法書士に相談することです。

実際に話してみて、“どうも合わないな”、“あまり信用できないな”と感じる場合、いくらその人が資格や実績を持っていたとしても相談しない方が良いでしょう。

特に家族信託は、前述の通り契約当事者が全て親族なので、親族間のプライベートな部分にも踏みこまざるを得ません。

自分が信頼できない司法書士に相談すると、嫌な気分を味わい後で後悔してしまう可能性もあります。

家族信託に限ったことではありませんが、専門家へ相談する場合、数ヶ月以上の長い付き合いになることが多いです。

そうなれば、必然的にコミュニケーションをとる機会も多くなります。信頼できる司法書士に相談した方が、人付き合いという面でも楽かもしれません。

実際に会って話をしてみて、本当に信頼できる司法書士に依頼するのが最も重要ではないでしょうか。

「この人なら安心して仕事を任せられる」という安心感があるか否かをよく検討してから依頼する司法書士を選ぶと良いでしょう。

家族信託を司法書士へ依頼した場合の費用と報酬

家族信託を行う場合、税金などの費用や司法書士への報酬が必要になります。ここでは、これらの費用や報酬についてご紹介します。

家族信託を行う場合に発生する費用

家族信託を行う場合、実費として以下の費用が必要になります。

 

・登録免許税
・公正証書作成手数料

 

1つ目の登録免許税は、不動産を信託財産とする場合の登記にかかる税金です。

登録免許税の額は、固定資産税評価額の1,000分の4になります。例えば、固定資産税評価額が1,000万円の不動産を信託財産とする場合にかかる登録免許税は4万円となります。

2つ目の公正証書作成手数料とは、家族信託契約書を公正証書とする場合にかかる費用です。

公正証書を作成する場合は公証人に手数料を支払わねばなりません。

この額は家族信託契約で信託の対象とされる財産の額によって決まります。

だいたい、3万円〜10万円程度となるケースが多いです。

司法書士への報酬

司法書士の報酬は自由に決められるため、決まった額はありません。

事務所や司法書士法人によって料金体系も異なります。

信託財産の額が増えれば報酬も増える傾向にあり、相場としては、最低でも30万円程度は司法書士への報酬が発生すると思っていた方が良いでしょう。

まとめ

今回は、家族信託は司法書士へ相談するのが一般的であることや相談する際の司法書士の選び方などについてご紹介しました。

専門資格や他の専門家と連携できるネットワークを有している司法書士に相談すれば、スムーズに家族信託を組成できるでしょう。

もっとも、家族信託は信託契約の当事者が全員親族でありプライベートな部分にも踏み込むため、信頼できる司法書士選びが重要です。

“この人なら安心”という司法書士に依頼できるよう、事前に話をしてみると良いかもしれません。

 

この記事の監修者

司法書士 梶原隆央(かじわらたかひさ)
神奈川県出身
平成21年司法書士資格取得
トリニティグループの信託部門にて、 実家信託から信託財産数億円に及ぶ信託、 自社株式の信託等、幅広く信託案件に対応。