家族信託の手続きは自分でできる?費用や注意点についても解説!

2021年02月10日

もし、あなたが家族信託に興味を持っていても、

手続きが複雑なのではないか?
自分で手続きをすることはできるのか?
高額な費用が掛かるのではないか?

など不安な点は多いかもしれません。

この記事では、家族信託の手続きは自分でできるのか、その場合の注意点にはどのようなことがあるのかなどについて解説しますので、ぜひ参考にしてください。

1.家族信託の手続きを自分でする場合の手続きの流れ

家族信託の手続きを自分でする場合、どのような手順で何から始めればよいのでしょうか。

まずは、家族信託の手続きの大まかな流れについて紹介します。

手順①家族信託の内容について話し合う

まずは当事者間や家族間で家族信託の内容についてしっかりと話し合います。

家族信託の当事者は、自分の財産の管理や処分を誰かに託す「委託者」、委託者から財産を託されて信託契約で定めた目的に従い管理等を行う「受託者」、財産の管理・処分等によって発生する利益を受け取る「受益者」です。

家族信託では、ほとんどの場合、委託者と受益者は同一人物としてスタートします。

家族信託について話し合うとき、当事者だけでなく、できる限りそれ以外の家族にも、「なぜ、家族信託をするのか」などについてしっかりと説明し、理解してもらうことが大切です。

それにより、後から家族間トラブルなどが発生する事態を防ぐことができます。

まず話し合う内容としては、信託の目的があります。
認知症に備えるための家族信託、相続発生後の財産を誰に引き継がせるかを決めるための家族信託など、信託の目的はそれぞれの事情によって異なるでしょう。

また、信託する財産は何にするのかを検討することも大切です。
預貯金、不動産、株式などの有価証券といった財産の中から、何を信託して受託者に管理等を託したいのかを慎重に決めましょう。

そして、受託者にどのような権限を与えるのかについても決める必要があります。

たとえば、不動産を信託する場合に、売却する権限まで与えるのか、賃貸したり管理する権限のみ与えるのかなど、信託の目的を達成するためにどの程度の権限を与えればよいのかについて、しっかりと検討しましょう。

手順②合意内容に基づいた家族信託契約書を作成する

当事者や関係者の間で話し合って合意した内容に基づき、信託契約書を作成します。

信託契約書の作成には厳密なルールがあるわけではありませんが、できるかぎり具体的な内容にして、解釈が分かれたり誤解が生じるなどの揉める要素のない内容にすることが大切です。

信託契約書は自分で作成したものに署名捺印するだけでも有効ですが、公証役場で公正証書にしてもらうのが一般的です。

公正証書にすることで、証明力の高い書類となり、トラブルを防ぐことにつながります。

家族信託契約書の具体的な作成方法については、次章で詳しく紹介します。

手順③受託者が財産を管理するための信託口口座を開設する

信託財産に現預金がある場合には、受託者が財産を管理するために、金融機関で専用の信託口口座を開設します。

信託口口座を開設するためには、信託契約書が必要となる場合があります。

手順④信託財産の名義を委託者から受託者へと移す

信託財産が現預金の場合には、委託者の現預金を信託口口座に入金し、以後受託者がこのお金を管理していきます。

信託財産が不動産の場合には、委託者から受託者へ、不動産の登記名義を変更する所有権移転登記と信託の登記をする必要があります。
これにより、当該不動産が信託財産であることが公になることになります。

有価証券や金融商品を信託する場合には、委託者がその商品を保有している証券会社にて信託口口座を開設します。

しかし、信託口口座を開設できる証券会社は限られていますので、有価証券などの信託をしたい場合には、信託契約を締結する前に、証券会社に信託口口座の開設が可能か確認しておく必要があります。

2.家族信託契約書の作成方法

家族信託契約書はどのような内容にすればよいのでしょうか。
家族信託契約書の作成方法について紹介します。

家族信託契約書に記載する内容には決まりがあるわけではありませんが、主に以下のような内容を記載するとよいでしょう。

①信託契約の趣旨

信託契約がどのような趣旨でなされるものかを記載します。

 

・記載例
「委託者甲は、受託者乙に対し、第〇条記載の信託の目的を達成するため、第〇条記載の財産を信託財産として管理、運用、処分およびその他当該目的達成のために必要な行為をすることを信託し、受託者乙はこれを引き受けた。」

 

②信託の目的

何のために家族信託を行うのか、家族信託の目的を記載します。

 

・記載例
「本信託は、受託者による資産の適正な管理、保全、運用、処分を通じて、委託者の判断能力が低下した場合にも、信託された財産を守り、併せて受益者及びその家族に必要な資金を確保及び給付するなどして生活の安定に寄与することを目的とする。」

 

③当事者(委託者・受託者・受益者)

信託の当事者である委託者、受託者、受益者を明記します。

受託者については、契約当時の受託者が死亡した場合の第2次受託者を誰にするかについても記載するとよいでしょう。

④信託財産

受託者に管理等を託す信託財産を明記します。財産が特定できるように具体的に記載しましょう。

不動産の場合には、登記事項証明書に記載されている通りに記載しましょう。

⑤信託の内容

信託財産をどのように管理、運用するのかなどの信託の内容について記載します。

 

・記載例
「受託者は、本件信託財産の管理、運用を行い、信託不動産については、受託者が相当と認めるときは、これを第三者に賃貸し、あるいは売却等の換価処分するものとする。そして、受託者は、本件信託不動産から生ずる賃料その他の収益、換価代金並びに信託財産に属する金融資産をもって、信託不動産等にかかる公租公課、保険料、管理費及び修繕費、敷金保証金等の預り金の返還金、管理委託手数料、登記費用、その他の本件信託に関して生ずる一切の必要経費等を支払う。

2 受託者は、受益者の要望に応じ、受託者が相当と認める受益者の生活・看護・療養・納税等に必要な費用を、前記信託不動産の賃料等収益、換価代金並びに信託財産に属する金融資産の中から受益者に随時給付し、また受益者の医療費、施設利用費等を支払う。」

 

⑤受託者の権限及び義務

受託者にどのような権限を与えるのか、義務を負わせるのかについて記載します。

 

・記載例
受託者は、本件信託不動産の保存及び管理運用に必要な処置、特に当該不動産の維持・保全・修繕等について、受託者が適当と認める方法、時期及び範囲において行うものとする。

2 受託者は、本件信託不動産に付する損害保険については、速やかに受託者を契約者とする手続き又はそれに準じた手続きをするものとする。

3 本件信託不動産については、それを第三者に賃貸することが相当であると認められる
場合には、その時の賃料相場を勘案した適正な賃料にて第三者に賃貸することができる。

4 受託者は、信託の目的に照らして相当と認めるときは、本件信託不動産を売却することができる。

 

⑥信託の終了事由や信託の期間

どのような場合に信託が終了するのか、信託の期間をいつまでにするかについて記載します。

 

・記載例
「本件信託は、次のいずれかの事由が生じたときに終了する。
(1)委託者兼受益者が死亡したとき
(2)受益者及び受託者が合意したとき
(3)信託財産が消滅したとき
(4)信託法で定める終了事由に該当したとき」

 

3.家族信託の手続きを自分でするときの注意点

家族信託の手続きの流れや信託契約書の作成方法について紹介しましたが、これらの手続きを自分で行うことは不可能ではないものの、難易度が高いことは事実です。

自分で手続きをするときの注意点について紹介します。

①契約書の内容は十人十色なのでサンプルをそのまま使用できない

家族信託について書かれている書籍やインターネット上には、家族信託契約書の見本や雛形が掲載されています。

これらを活用すれば簡単に信託契約書を作成することができると考えがちですが、家族信託契約書については、人それぞれの目的や要望を反映させた内容のものにしなければ意味がありません。

そのため、サンプルをそのまま使用することはほとんど不可能だと言えます。

サンプルをそのまま使用した場合、自分の意図とは違う契約内容になってしまう可能性があるため注意が必要です。

②内容に不備がある可能性がある

自分で手続きを行った場合、思わぬ不備が生じてしまう可能性があります。

大きな誤りがある場合には、公証役場や法務局で指摘を受けて修正することもありますが、信託契約の詳細の不備や不明確な表現、将来的なリスクが生じる可能性のある内容などについて誰かが指摘してくれるわけではありません。

後からこのような不備が発覚し、すでに委託者が認知症などを発症して契約の修正をすることができず、取り返しのつかない状態になってしまうリスクもあるので注意が必要です。

③信託財産に不動産がある場合、登記の専門知識が必要

信託財産に不動産がある場合、所有権移転登記と信託の登記をする必要があります。

この登記の手続きは難易度が高く、信託や不動産登記の知識が乏しい人にはハードルが高いのが実情です。実際には、ほとんどの人が司法書士に登記の手続きを依頼します。

④相続発生後の対策も講じるための知識が必要

家族信託を利用する場合、委託者が生きているときだけではなく、相続発生後にも備えた対策を講じる必要があるケースが多いでしょう。

相続税や贈与税の対策や、相続発生後の財産争いを防ぐための対策についても総合的に考える必要がありますが、自分だけでこれらについて万全な対策を考えるのは限界があり、誤った認識で適切でない手続きを行い、自分の意図とは異なる結果を招いてしまう可能性があります。

⑤家族信託がスタートした後の作業について受託者一人で対応しなければならない

家族信託が開始した後は、財産の管理、運用などを受託者が自らの判断で行うこととなります。また、付帯する作業として帳簿付けや財産目録の作成、税務署への申告などといった作業が発生することになります。

どのような場合にどんな手続きが必要になるのか、自分一人で判断するのは難しく、必要な手続きが漏れてしまうなどのトラブルが発生する可能性があるので注意が必要です。

4.家族信託の手続きにかかる費用

家族信託の手続きにはどれくらいの費用がかかるのでしょうか。費用の目安について紹介します。

①公正証書による信託契約書の作成

信託契約書を公正証書で作成する場合、公証役場に支払う手数料が発生します。

手数料の金額は、信託財産の金額などにより異なります。

通常、信託財産が5000万円程度の場合は約5万円、信託財産が1億円程度の場合は約7万円の手数料となります。

信託契約書の作成を専門家に依頼する場合には、別途専門家への報酬が発生します。

内容の相談を含まない信託契約書の作成のみを依頼する場合、10~15万円程度が報酬の目安です。

信託財産が5000万円程度で専門家に手続きを依頼した場合には、公証役場の手数料+専門家報酬で15~20万円程度が費用の目安となります。

ただし、そもそも内容の決まった信託について、契約書の作成だけ依頼するというケースはあまりないでしょう。内容が決められるくらいの知識を持っている方であれば、契約書の作成そのものは難しくないためです。

契約書の作成で、専門家の力を借りるとすれば、後述する、トータルで専門家に依頼した場合の費用が発生するものとしてご理解をいただければと思います。

②不動産がある場合の登記申請手続き

信託財産に不動産がある場合、不動産の名義を委託者から受託者に変え、その不動産が信託財産であることを公にするために「所有権移転及び信託」の登記を法務局で申請する必要があります。

登記には登録免許税という税金がかかりますが、「所有権移転」については信託の場合非課税となります。

「信託」の登記については登録免許税が発生し、不動産の固定資産税評価額に税率0.4%をかけて計算します。

たとえば固定資産税評価額が3000万円の場合は12万円の登録免許税がかかります。(ただし、令和3年1月現在、租税特別措置法により土地の税率は0.3%となります)

これらの登記の手続きを司法書士に依頼する場合、別途司法書士への報酬が発生します。
登記の手続きのみを依頼する場合、10~15万円程度が報酬の目安です。

信託する不動産の固定資産税評価額が3000万円の場合に司法書士に手続きを依頼した場合には、登録免許税+報酬で22~27万円程度が費用の目安となります。

③家族信託の手続きをトータルで専門家に依頼する場合

家族信託のコンサルティング、スキームの作成から契約書作成、登記などの手続きをトータルで専門家に依頼する場合、どの程度の費用がかかるでしょうか。

これは、依頼する専門家、事案の複雑さ、財産の種類や金額などによって異なりますが、信託財産に対して1%などと定めているケースが多く見られます。(ただし、最低金額として30万円程度はかかるという料金設定になっている場合が多い)

たとえば信託財産が預貯金5000万円、不動産評価額5000万円の合計1億円の場合、報酬が1%だと、100万円となります。

④専門家に相談のみをする場合

まずは専門家に相談だけしてみたいという場合、費用の目安は1時間当たり5000円から1万円程度となります。

5.専門家に依頼する場合のポイント

家族信託の手続きを自分で行うことは不可能とは言えないものの、かなりハードルが高いことも事実です。そのため、専門家への依頼も検討することをお勧めします。

ここでは、専門家に依頼する場合のポイントについて紹介します。

①家族信託の実績や知識があるか

家族信託は比較的新しい制度であり、弁護士や司法書士、税理士と言った専門家であっても、必ずしも家族信託の知識や実績が十分にあるわけではありません。

知識や経験の乏しい専門家に依頼してしまうと、自分の意図する内容の家族信託が実現できなかったり、最悪の場合手続きに不備が生じる可能性もあります。

家族信託に力を入れており、実績のある専門家に依頼すれば安心です。

②将来を見据えた万全な対策を考えてくれるか

家族信託は、長期的な視点に立って起こりうる様々なケースに対応できるように万全な対策を立てていくことが大切です。

ケースによっては、家族信託だけではなく、遺言書作成など他の手続きも併せて行うことなどにより、より目的を達成するために効果的という場合もあります。

専門家の立場から、相続発生後の対策も含めた提案などを行ってくれるかどうかも大切なポイントです。

③家族信託がスタートした後も相談に乗ってくれるか

家族信託は、スタートした後にも財産の管理、運用などに伴い様々な手続きが必要となるため、継続的に相談に乗ってくれる専門家に依頼すれば安心です。

疑問点や困ったことがあったとき、その都度しっかりと相談に乗ってくれる専門家であるかどうか、まずは契約前の相談に行って話を聞いたうえで見極めるとよいでしょう。

④料金についての説明をしっかりしてくれるか

専門家に家族信託を依頼する場合、数十万円以上の費用がかかるのが通常です。

料金について、どのような計算方法でどれくらいの費用がかかるのか、事前に説明してくれる専門家に依頼することで、後から想像とかけ離れた費用を請求されるような事態を避けることができます。

6.まとめ

家族信託の手続きを自分で行うことは不可能ではないものの、一般的には難易度が高く、専門家へ依頼したほうが安心であるといえます。

まずは相談に行ってみて、しっかりと話を聞いてくれるのか、知識や経験が豊富であるか、的確なアドバイスをしてくれるのかなどを確認してみてはいかがでしょうか。

 

この記事の監修者

司法書士 梶原隆央(かじわらたかひさ)
神奈川県出身
平成21年司法書士資格取得
トリニティグループの信託部門にて、 実家信託から信託財産数億円に及ぶ信託、 自社株式の信託等、幅広く信託案件に対応。